ニュース
展示までの道のり──アカアマダイ
 └─2016/06/10

 葛西臨海水族園「世界の海」エリア「深海の生物4」の水槽であらたにアカアマダイを展示しました。この魚はやや深い水深の砂泥底に生息しており、巣穴を掘る習性があります。薄暗い海の中で桜色の体色をしたとても美しい魚です。


 今回展示したアカアマダイは昨年(2015年)の秋に職員が深海釣りで採集した個体です。新しく水族園にやってきた魚の多くは、いったん展示裏にある水槽に収容し、キズの治療とともに餌づけ(えさに慣れさせること)をおこないます。その後、寄生虫がついていないかチェックし、落ち着いてえさを食べて元気になったら展示水槽に移します。このアカアマダイも当初は展示裏の水槽で傷を治療しました。幸い傷はすぐに治ったのですが、警戒心が強いのか、なかなかえさを食べてくれませんでした。

 水族園にやってきたばかりの魚は落ち着かなかったり、警戒したり、すぐにはえさを食べませんが、長くても1〜2週間ほどでえさに慣れます。私たちも生きたエビを与えるなど工夫をしましたが、なかなか食べてくれませんでした。それでも根気強くえさを与えていると、ついに警戒心が薄れたのか、はたまた空腹の限界がきたのか、ある日、口元に来たアサリをパクッと食べたのです。

 えさを食べたときには嬉しさのあまり声が出てしまいました。アカアマダイが水族園にやってきてからえさを食べるようになるまで、はなんと約3か月が経っており、私が今まで経験した中で、餌づけにいちばん時間がかかった魚でした。

 その後はどんどん食べるようになり、痩せていた体も見る見るうちに元の体型に戻り、このたび展示することができました。そんな展示まで長い道のりがあったアマダイですが、今では水槽内で落ち着ついたようすです。ひれをなびかせながら水槽内を優雅に泳ぐ美しいアカアマダイをぜひご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 遠藤周太〕

(2016年06月10日)


ページトップへ