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続・新たな視点で見てみると(57)水槽内の生存競争──デバスズメダイの産卵
 └─2016/05/28

 先月(2016年4月)のことになります。開園前に水槽をチェックするため館内を巡回していると、「世界の海」エリア「インド洋」水槽の前に職員が集まり、何やら騒がしくなっていました。近くに行ってみると、水槽に群れで展示しているデバスズメダイがペアになり、海草のリュウキュウスガモに卵を産み付けているところでした。


ペアになったデバスズメダイがリュウキュウスガモに産卵

 水族園ではスズメダイのなかまの産卵は珍しいことではなく、同じ世界の海エリアだけでも「グレートバリアリーフ」水槽のスパイニークロミス、「地中海」水槽のメディタレイニアンクロミス、そして同じ「インド洋」水槽でもミスジリュウキュウスズメダイやカクレクマノミ(クマノミはスズメダイ科)の産卵が比較的頻繁に見られています。

 今回、デバスズメダイの産卵が特別だったのは、アクリルガラスのすぐそばに生えているリュウキュウスガモに産み付けたこと。小さな卵ですが、とても近くにあるためよく観察することができます。また、親のデバスズメダイは卵を守るために、近くを通る魚を追い払う行動をよく見せていました。「これなら孵化するまで来園された方に楽しんでいただけるぞ!」と期待していたのですが……。

【動画:デバスズメダイ産卵……そして】
デバスズメダイの親は近くを通る魚を追い払います。しかし、強敵フチドリカワハギが……。

 コケで汚れていた他の水槽をキレイにして「インド洋」水槽に戻ってきてみると、まだ産卵は続いていました。ところが突然狂ったようにデバスズメダイが泳ぎだしたので何ごとかと見てみると、この水槽に同居しているフチドリカワハギが、なんと産んだばかりの卵を食べ始めてしまったのです。なんとか防ごうとデバスズメダイは必死で抵抗しますが、フチドリカワハギは2匹で次々と卵を食べていきます。最終的にはデバスズメダイは諦めてしまったようで、卵の産み付けられていたリュウキュウスガモはボロボロにされてしまいました。

 その後も「インド洋」水槽では、サンゴの根元の方にミスジリュウキュウスズメダイが、ハタゴイソギンチャクが付いている石にカクレクマノミが産卵しています。ヒョロヒョロだったリュウキュウスガモは太くて立派なものに植え替えたので、デバスズメダイがまた産卵するのを楽しみにしています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2016年05月28日)


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