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「豊饒」の深海へいらっしゃい! 深海コーナーリニューアル
 └─2016/04/29

 2016年4月も下旬。就職や新しい学校への入学・進級など、身の回りの環境が大きく変化した方々も多いのではないでしょうか。

 さて、「変化」といえば葛西臨海水族園でもこの4月、深海コーナーで水槽サインの変更などのプチリニューアルをおこないました。これに合わせて深海コーナーのトップバッター、「深海の生物I」水槽で新たな生物の展示を始めました。


オオメハタ

 まず、魚類ではオオメハタを新規展示しました。この魚はホタルジャコ科に属する魚です。聞き慣れない科名ですが、食用魚として人気のアカムツ(別名ノドグロ)などが属します。名前の通り大きな目と大きな口でいかにも“勝気”(?)に見えますが、水槽の個体は餌を与えられても、目の前に落ちてきたものをじっくり観察してからおもむろにパクッと食べるなど、のんびりした性格のようです。

 水深 200メートルほどの深海に生息しているため、採集時にダメージを与えないように工夫したり、採集後も管理には細心の注意を払ったり、なかなか長期飼育の難しい魚です。しかし、試行錯誤の結果、やっと安定して飼育できるようになり、デビューを飾ることができました。


ウミエラのなかま

 次に、無脊椎動物ではウミエラのなかま2種の展示を始めました。ウミエラはウミトサカやイソギンチャクに近い生き物です。体は柔らかな寒天状で、採集、輸送、バックヤードでの飼育など、管理に気を使う生物の一つです。長期間飼育することがむずかしいしい種でしたが、飼育条件を少しずつ調整し、今では1年以上の飼育が可能になりました。採集時には同じ場所で複数の個体が採れるので、海底では林立しているのだろうと想像し、今まで1個体だった水槽で複数の個体を展示し、自然の状況を再現しています。


ウミホオズキチョウチン

 最後はウミホオズキチョウチンという生き物です。一見アサリやハマグリなどと同じ貝類に見えますが、まったく別の「腕足類」と呼ばれる生物グループに属しています。貝類のように殻を頻繁に動かせる筋肉はあまりないようで、殻を少し開けたまま、中にある毛の密集した器官で餌をとります。また、肉茎と呼ばれる部位で岩などに体を固定できるのも貝類にはない特徴の一つです。ウミホオズキチョウチンはおよそ5億年前からほとんど姿形を変えていないと言われ、「生きた化石」とも呼ばれています。

 寒くて暗い「静」のイメージが先行しがちな深海の世界ですが、その生物量と多様性には驚くばかりです。今後も長期飼育できる生物の種類を増やし、みなさんに「豊かな深海」をご紹介できるよう、工夫を重ねていきます。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 増渕和彦〕

(2016年04月29日)


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