ニュース
大きな胸びれのいろいろな役割──ホウボウの展示
 └─2016/04/15

 葛西臨海水族園で小笠原・伊豆七島や東京湾の生物たちを展示している「東京の海」エリアの各水槽は、階段を上がると水槽の裏側のようすのほか、水槽を上から観察することもできます。私たちが給餌をしながら水槽を回っていると、ときどき「わー、きれいな魚」とお客さんの歓声を受ける魚がいます。


 「東京湾の漁業」の水槽では大きな胸びれが特徴的なホウボウを展示しています。ホウボウは北海道南部以南、南シナ海まで分布し、沿岸から水深約 600メートルの砂泥底にくらしています。

 ホウボウという名前は、浮き袋の筋肉を収縮させて発するその鳴き声が由来と言われたり、頭が角ばった方形をしていることに由来するとされたり、いろいろな説があります。

 大きなうちわのような胸びれはメタリックな青緑色で、鮮やかな青の縁取りと斑点で彩られ、とてもよく目立ちます。この胸びれをふだんは折りたたみ、泳ぐときには翼のように大きく広げてゆっくりと水の中を滑空するように移動します。

 水槽の底にいるホウボウを見ると、体の下側にある細長い脚のような部位を動かしていることに気がつきます。これは胸びれの軟条(ひれすじ)が棒状に離れたもので左右に3本ずつ合計6本あり、ホウボウはこの軟条を上手に使って海底を歩くことができます。観察していると、ときどき立ち止まり、軟条を砂の中に差し込んで何かを探るような動きをすることがあります。軟条は感覚器官しての役割を果たすと同時に、砂の中にいるエビやカニ、ゴカイ等のえさを探し出し、たくみに掘り出して食べるのにも使われます。他の魚とちがい、ホウボウの胸びれはさまざまな役割を担っているのです。

 他の魚ではあまり見られない、少し変わった特徴を備えたホウボウを葛西臨海水族園でご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2016年04月15日)


ページトップへ