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壁についたキスマーク、だれのしわざ?
 └─2016/01/15

 私たち葛西臨海水族園の飼育係は、開園前に飼育生物の健康状態を観察した後、水槽の掃除をおこなっています。汚れやすさは水槽によって様々ですが、「世界の海」エリアの「インド洋」水槽は汚れやすい水槽の一つといえるでしょう。というのは、展示しているサンゴやリュウキュウスガモを育てるため、ライトをたくさんつけて明るくしているので、付着藻類などの「コケ」が生えやすいのです。ひどいときは、朝掃除しても昼ごろにはうっすらと壁やアクリル面にコケがつくこともあり、スタッフ泣かせの水槽です。

 さて、この水槽では朝、壁に直径1センチ弱のキスマークがよくついています。


たくさんのキスマーク、だれのしわざ……?

 この色っぽいキスマークをつけたのはサザナミハギです。サザナミハギは、太平洋からインド洋にかけて、暖かい海のサンゴ礁域に生息するニザダイ科の魚です。展示しているのは2尾で、全長10センチほどの個体です。色は全体的に黒っぽく、よく見ると体に筋状の縦じま模様があります。頭部から目のまわりにかけてオレンジ色の斑点があるのも特徴です。


サザナミハギ

 水槽のサザナミハギを見ると、岩や海草に口を頻繁に押しつけるようにして、何かをしきりにかじっています。これは岩などの表面についた藻類や有機物などを食べているのです。じつは、先ほどご紹介したキスマークは、サザナミハギが壁についたコケを食べた跡(歯型)でした。サザナミハギの歯は、先端がブラシ状をしており、コケをはぎ取るのに適した形状をしています。

サザナミハギの歯の骨格標本(上顎)
壁についたコケを食べるインドカエルウオとその噛み跡

 この「壁のアート」を楽しめるのは、朝水槽を掃除する者の特権ですが、開園中でも午後の遅い時間に見られるかも知れません。

 ちなみに、この水槽の壁には別のタイプの噛み跡がついている時もあります。こちらは、インドカエルウオがコケを食べる際につけたもので、サザナミハギのものより円形に近い形をしています。

 もしも壁にキスマークがついていたら、犯魚(?)探しをしてみてはいかがでしょうか。

〔葛西臨海水族園飼育展示課 高濱由美子〕

(2016年01月15日)


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