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西なぎさで採集した珍しいカライワシ
 └─2015/11/06

 葛西臨海水族園では2か月に1度、周辺環境調査として葛西海浜公園の人工干潟「西なぎさ」で小型地曳網による生物調査をおこなっています。どの季節にどのような生き物がどれくらいいるのか、3回から4回ほど網を曳いて捕れた生物を調べます。この調査で捕れた生物を紹介しているのが、「東京の海」エリアの2階にある、「葛西の海2」水槽です。


 現在この水槽には、今年(2015年)の10月に実施した調査で採集された生物が入っています。とくに注目していただきたいのが「カライワシ」という魚です。お恥ずかしい話ですが、私はこのカライワシの実物を見たのは初めてで、採集時も名前がわかりませんでした。カライワシは今年8月の調査でも採集されたので、8月から継続して展示しています。8月の調査時にはまだ全長4センチほどの大きさでしたが、10月の調査では15センチほどの大きさの個体が採集されました。ただし10月に採集したカライワシは現在、魚どうしの相性を考慮し、展示水槽から取り出しました。


 カライワシは暖かい海の沿岸や沖合の表層に生息する、最大で全長60センチほどに成長する魚です。幼魚は汽水域や淡水域にも進入し、河川の下流域で見られることもあるようです。「イワシ」という名前ですが、イワシ類が属するニシン目ではなく、カライワシ目に属しています。また、仔魚の姿も大きく異なっており、イワシの仔魚であるシラス体型ではなく、レプトケファルス(葉形仔魚)と呼ばれる透明で葉のような形です。

 1999年からおこなっている調査でカライワシが確認されたのは過去6回ほどしかなく、西なぎさではとても珍しい魚です。現在展示しているのは8月に採集した個体ですが、近頃は水槽に慣れ、水槽中央付近の中層で泳いでいる姿を観察することができます。この機会にぜひ、実物のカライワシをごらんください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 太田智優〕

(2015年11月06日)



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