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大きく成長したマダイの展示とその体の中「タイ」
 └─2015/08/07

 私たち日本人になじみ深い魚としてマダイを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? 立派な体形、色鮮やかな赤い体色、優れた食味などの特徴から、神事や祝い事には欠かすことのできない魚であり、古来より海魚の王として珍重されています。


 葛西臨海水族園「渚の生物」の展示水槽には大きなマダイがいます。全長は70センチメートルくらいまで成長し、正確な飼育年数は不明ですが、非常に長生きの個体です。

 マダイは北海道以南の日本各地、朝鮮半島南部から東シナ海、南シナ海に分布し、エビ・カニの甲殻類、貝類、イカ類、小魚などを食べて最大で全長1メートルになります。

 水槽の中を泳ぐマダイは、他の魚と比べて大きくひときわ目立ち、この水槽の主といった感じがします。餌の時間になると同居しているドチザメなどの大型の魚と競い合いながらダイナミックな素早い泳ぎでえさを食べるようすが見られます。


「鯛のタイ」。大きな目をしたタイのように見える

 今度、尾頭付きの塩焼きや頭の煮付けなどマダイを食する機会があったら、胸びれの近くの骨を注意してみてください。ていねいに箸を進めていくと魚のような形をした骨を見つけることができるでしょう。これは胸びれを支える肩帯(けんたい)と言われる部分の二つの骨(肩甲骨と烏口骨[うこうこつ])が連なったもので、大きな目をしたタイのように見えることから俗に「鯛のタイ」と呼ばれています。この「鯛のタイ」はマダイ以外の魚にもありますので、他の魚のコレクションをしてみるのも面白く、また魚の骨についていろいろと詳しく調べてみるのも夏休みの宿題に向いているかと思います。

 「鯛のタイ」については古く江戸時代の書物で紹介されています。このことは箸を上手に使って魚を余すところなくいただく魚食文化と無関係ではないのでしょう。このようなことを思い浮かべながら、水槽の中を悠々と泳ぐマダイをご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2015年08月07日)


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