ニュース
形いろいろ、食べ物いろいろ、チョウチョウウオの“口”に注目
 └─2015/07/17

 白や黄色を基調にいろいろな色やデザインが体に見られるチョウチョウウオのなかま。平たい体をひらひらさせてサンゴ礁を泳ぐ姿は、花畑を舞うチョウのようでもあり、英語ではバタフライフィッシュ(=チョウ魚)と呼ばれます。チョウチョウウオのなかまは、暖かい海を中心に114種が知られています。

 狭い範囲で見ても、チョウチョウウオのなかまは同じ場所に多くの種が見られます。ふつう近縁の種どうしでは、えさや隠れ家、日当りなど特定の環境をめぐって競争がおこりやすいと考えられますが、チョウチョウウオのなかまたちには競争を避ける工夫があるのでしょうか。

  
左から、ハシナガチョウチョウウオ、トゲチョウチョウウオ、レインフォーズバタフライフィッシュ

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「グレートバリアリーフ」水槽には、ハシナガチョウチョウウオ、トゲチョウチョウウオ、レインフォーズバタフライフィッシュの3種のチョウチョウウオがいます。それぞれの口の形に注目してください。ハシナガチョウチョウウオは細長く伸びたピンセットのような形をしています。トゲチョウチョウウオはそれよりやや短くしっかりした感じです。レインフォーズバタフライフィッシュは短くてあまり尖っていません。この形の違いは、それぞれが好むえさの違いと関係しています。

 ハシナガチョウチョウウオは、ピンセットのような口でサンゴの隙間に隠れた小さな甲殻類などをつまんで食べます。トゲチョウチョウウオは、サンゴのポリプや小さなイソギンチャク、甲殻類やゴカイのなかま、海藻など何でも食べます。レインフォーズバタフライフィッシュは、海藻や小さな底生無脊椎動物を食べています。

 このように食べるものの好みが少しずつ異なることで、えさをめぐる競争を避けることができているのかもしれません。そして口の形を見るとどんなえさを食べているのか、その手がかりを得ることができます。

 チョウチョウウオに限らず、魚の口の形に注目して、それぞれどんなえさを食べているのか、あるいはどんなものを食べるのに適しているのか、想像しながら観察すると、新たな発見があるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕

(2015年07月17日)



ページトップへ