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春眠アカツキハギを覚えず……?
 └─2015/03/28

 だんだんと暖かく感じる日も増え、春の陽気が感じられる季節になってきました。「春眠暁を覚えず」という言葉があるように、この季節になると暖かい陽気にあてられ、寝過ごしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はそんな季節にちなんだ名前をもつ魚を紹介したいと思います。



 その魚は世界の海エリア「ハワイ沿岸」水槽に展示している、その名も「アカツキハギ」です。2003年に標準和名としてこの名がつけられましたが、以前は、「アキレスタング」という名でした。「暁」が由来なのかどうか、残念ながら不明です。

 ですが、この魚の特徴である黒い体色とふちの白い線は、夜が明けて白み始めた空のように、そして尾びれの付け根(尾柄)にある大きな赤斑模様は、夜明け後の太陽のように見えませんか?

 さて、そんな体色のアカツキハギですが、中部太平洋のサンゴ礁や岩礁域の浅場に生息しており、日本では南鳥島と大東諸島のみに生息するめずらしい種です。「ハギ」の名がついていますが、カワハギのなかまではなくニザダイのなかまで、おもに藻類を食べて生活しています。

 綺麗な模様をしていますが、尾柄には鋭い棘が隠されており、海で出会ったときや水槽を移動する際には注意しなければならない魚でもあります。また、大きな赤斑模様は、そこに棘があることを周囲にアピールしていると言われています。

 水槽内ではその特徴的な模様を見せつけんばかりに悠々と泳ぎ回り、疑岩の表面に生えている藻類等を齧って食べている様子も観察できます。さらに、なにか気に入らないことがあるのか、ときどき他の魚を追いかける行動も見られ、なかなか気の強い魚のようです。

 陽気な日差しに誘われて眠気に襲われる季節になりますが、水族園で面白い生物たちの姿や行動を観察し、眠気を吹き飛ばしてみてはいかがでしょうか。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 加茂耕太朗〕

(2015年03月28日)


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