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ゴンベの背びれのかわいいヘア──ヒメゴンベの展示
 └─2015/02/21

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「ハワイ沿岸」水槽では、2015年1月中旬からヒメゴンベを展示しています。ヒメゴンベは、おもにインド洋から太平洋の暖かい海にすむゴンベ科の魚です。

 全長50センチにもなる世界最大級のゴンベのなかま、ジャイアントホークフィッシュについては下記記事で紹介しましたが、ヒメゴンベは成長しても10センチ程度にしかならない小型種です。

・記事「日本初公開!ジャイアントホークフィッシュ」(2012年10月5日)

 展示個体は全長約7センチで、うっすら桃色をした体全体に赤褐色の斑紋が並んでいます。ときどき泳いでは岩の上に着地し、キョロキョロとまわりを見渡している姿は愛嬌があります。水槽に入れた当初は、まわりを警戒して岩の奥に隠れがちでしたが、徐々に表に出てくるようになりました。

 
左:ヒメゴンベ 右:江戸時代の髪形「盆の窪」(遊子館『大江戸復元図鑑』より)


 よく見ると、背びれにある棘(きょく)のそれぞれの先端から、糸のようなものが何本か出ているのがわかります。この糸状の突起はゴンベのなかまの特徴のひとつです。ゴンベという名前は、この糸状突起が、江戸時代などによく見られた“権兵衛”と呼ばれる幼児の髪形に似ていることに由来しているようです。この髪形は、盆の窪、つまり首の後ろの中央のくぼんだところに髪を剃り残したヘアスタイルであり、髪形そのものを「盆の窪」と呼ぶこともありました。

 名前の由来にもなっているゴンベの糸状突起ですが、何の役に立っているのかよくはわかっていません。現代では“権兵衛”の髪形を見る機会はまったくありませんので、実際に糸状突起が“剃り残した毛髪”に似ているのか見比べることはできませんが、由来を知ると、庶民的な名前に親しみがわきます。

 水族園では現在、ヒメゴンベの他に、「グレートバリアリーフ」水槽でベニゴンベとメガネゴンベ、「小笠原の海1」水槽でスミツキゴンベ、「伊豆七島の海1」水槽でオキゴンベと多くのゴンベのなかまを展示しています。いずれも泳ぎ回るタイプではないため目立ちませんが、ときどきサンゴや岩の間を泳ぎまわる愛らしい姿を見せてくれます。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕

(2015年02月21日)


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