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相模湾での「KOOHOO航海」レポート
 └─2015/02/21

 葛西臨海水族園は、独立行政法人海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC*)が広報活動の一環として運営している「KOOHOOの会」(コーホーの会:Key Observation and Outreaching of the Hidden Ocean and Organisms)に参加しています。

 KOOHOOの会では、深海の魅力を広く一般の方々にも知ってもらうことを目的として、JAMSTECとその近隣の博物館や水族館が共同で、KOOHOO航海(調査研究航海)や広報活動をおこなっています。

 今回は、昨年(2014年)12月26日から29日にかけて相模湾で実施したKOOHOO航海のようすをお伝えします。

今回の調査で使用した「ディープトウ」

 乗船したのはJAMSTECの調査船「よこすか」です。みなさんご存知の「しんかい6500」の支援母船として活躍している船です。

 今回の調査では「ディープトウ」というシステムを使って深海生物の観察をおこないました。船から深海へと伸びる全長数千メートルのケーブルの先端に複数のカメラや各種センサーが取り付けられており、リアルタイムで送られてくる映像で生物や地質を観察することができます。さらに今回、相模海丘ではディープトウにプランクトンネットを取り付け、生物の採集も試みました。

 最初に潜航調査をしたのは相模湾東部に位置する相模海丘です。機器が海底に達したのでモニターを見てみると、海底にはクモヒトデのなかまやクルマエビ上科の一種(現在同定中)が多く観察されました。とくにこのエビのなかまは綺麗な赤色をしており、照明の光を受けると一層輝いて見えました。

 
左:プランクトンネットで採集されたクルマエビ上科の一種(京急油壺マリンパーク岩瀬氏撮影)
右:観察されたクモヒトデのなかまとソコダラのなかま

 浮上後、プランクトンネットを見てみると、このクルマエビ上科の一種が生きた状態で入っていました。急いで水槽に移して観察すると、船上でもモニターで見たとおりの綺麗な赤色で、しばらくそのまま眺めてしまいました。何とかこのまま生きてほしいと思ったのですが、翌日残念ながら死亡してしまいました。

 次に調査したのは、伊豆半島沖の石廊海底谷(いろうかいていこく)という地点です。歴代の KOOHOO航海地点の中でも、ここは最も深く、水深1,699メートルまで調査しました。その地点の水温はなんと2.2℃。水圧はおよそ171気圧にもなります。過酷な環境ですが、クモヒトデのなかまやソコダラのなかまなどを観察することができました。

 今回紹介した生物たちを、いつかは展示水槽でみなさんにお見せしたいですね。

 *JAMSTEC:Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology の略称

〔葛西臨海水族園調査係 松村哲〕

(2015年02月21日)


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