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恥ずかしがり屋のレアな深海魚、ベニカワムキ
 └─2015/02/06

 都立動物園・水族園では、冬の魅力にスポットをあてた「Visit ほっと Zoo2015」キャンペーンを実施中です。

 葛西臨海水族園の「ほっとポイント」の一つ、深海コーナーの「深海1」の水槽ではベニカワムキを展示しています。ベニカワムキは深海に生息するフグのなかまですが、多くのフグには見られない腹びれがあることから、もっとも原始的なフグのなかまといわれています。


物陰からこちらをうかがうベニカワムキ


 水槽の中では物陰に隠れていることが多い恥ずかしがり屋ですが、給餌のときには出てきて、おちょぼ口で食べる姿には愛嬌があります。じつはこの魚は長期間の飼育がむずかしく、水族館でもなかなかお目にかかれないレアな深海魚といわれています。

 深海生物の飼育や展示がむずかしい原因の一つが「水圧」です。深海魚を短時間で水面まで引き上げると水圧が急激に低下し、眼や胃袋が飛び出したり、浮き袋が膨らんで浮いてしまったりする「減圧症」にかかります。そのままにしておくと死んでしまうため、これまでは浮き袋の空気を注射針で抜くなどの治療をおこなっていました。

 しかし、近年では特殊な水槽「圧力水槽」を現地に運び、採集直後に加圧する治療もおこなっています。加圧した後、時間をかけて徐々に水圧を下げ、ふたたび減圧症にならないようにしているのです。


治療に使用した圧力水槽


 じつはこのベニカワムキを展示できたのは、圧力水槽の治療の成果です。採集直後は水面に浮かんでいたベニカワムキをすぐに圧力水槽に入れて加圧すると、浮いていた体がゆっくりと沈み、少しずつ泳ぎまわるようになりました。その後、時間をかけて減圧し、水圧をかけてない状態でも泳げるまでに回復させてから、水族園に運び込みました。

 採集直後に圧力水槽で治療し、最初の難関である「水圧の壁」を乗り越えたのが成功の一因だったのかもしれません。なんとこのベニカワムキは、水族園に来てから3年経った今でも元気に「深海1」の水槽で泳いでいます。今後もこの圧力水槽を活用し、ベニカワムキを始め、さまざまなレアな深海魚を増やしていければと企んでいます。みなさんもぜひ恥ずかしがり屋のレアな深海魚、ベニカワムキを見に来てください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕

(2015年02月06日)


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