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これもマハゼ!? 江戸前の巨大マハゼ
 └─2014/12/26

 全長25センチにも達する巨大マハゼ。こんな大物を釣り上げたら、ハゼ釣りの太公望はさぞかしご満悦でしょうね。このマハゼを対象魚とした「ハゼ釣り」は、古くから江戸前の庶民の釣りの代表格で、夏から秋にかけての風物詩ともいえます。

 現在、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「運河」水槽でこの巨大マハゼを展示しています。マハゼは冬から春にかけて産卵・孵化し、夏から秋にかけて子どもは湾奥部の浅瀬でぐんぐん成長します。そして秋以降、水深10メートルほどの海底に移動し、巣穴を掘って産卵します。産卵後、その多くは死んでしまうので東京湾のマハゼの寿命はたいてい1年です。この時期の大きさは15センチほどで、釣りでよく釣れる大型のサイズでしょう。


左が今年生まれのマハゼ。右は全長20センチをゆうに超える昨年(2013年)生まれの巨大マハゼ


 しかし、この時期でも10センチに満たない小さなマハゼは成熟せず生き残り、翌年の秋以降に産卵します。この間にさらに成長するので最大でなんと28センチほどにもなり、釣り人には「ヒネハゼ」とも呼ばれます。

 じつは、水槽の巨大マハゼは昨年生まれの長寿のマハゼなのです。特徴は体の大きさだけではありません。とても大きなメスのお腹やシャベルのようにしゃくれたオスの口も目立ちます。この口は巣穴を掘るのに役立つのでしょう。

 この展示水槽ではマハゼの産卵を過去に確認したことがなく、どうやらここでは生後1年目のマハゼは成熟しにくいのかもしれません。自然の海と比べて、年間をとおして水温や塩分濃度が大きく変化しないことがその理由かもしれません。このために、そのまま生き残り、ぐんぐん成長して2年目の秋以降にこのような巨大マハゼになるのでしょう。この巨大マハゼ、元気に1日でも長く生きて、江戸前ハゼ釣りの太公望を魅了してほしいものです。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2014年12月26日)


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