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オビシメ、これぞ小笠原の魚
 └─2014/09/05

 都心から南へ1000キロ離れた小笠原諸島。ここはかつて一度も大陸とつながったことのない孤立した海洋島です。陸上には小笠原諸島固有の生物が多く見られますが、海の中にも見ることができます。

 葛西臨海水族園では、ユウゼンやレンテンヤッコなど小笠原を代表する魚を展示していますが、これらは国内の小笠原以外の海域でも見られることがあります。

 そこで今回紹介するのが「オビシメ」という魚。成熟したオスの体に白い模様があり、これが帯をしめたように見えることから名づけられました。オウムのくちばしのような口と頑丈な歯が特徴のブダイ科の魚です。かつてこの魚は、おもに東京湾以南に広く分布するアオブダイと同一種とされていましたが、1993年に小笠原にすむものが新種として認められました。しかも国内だけでなく、広い世界中の海でも小笠原付近にしか生息せず、まさに数少ない小笠原固有の魚といえます。

 今までオビシメは展示水槽やバックヤード水槽で飼育していてもなかなか太らず、痩せ気味の状態が続いていました。2013年から、より広くより太陽光が入る明るい水槽へオビシメを移動し展示しています。この水槽は透明度が高く明るい小笠原の海の特徴を再現しています。

 今までの水槽より広いだけでなく餌を競合する魚も多いため、なかなかオビシメに餌が行きわたりにくそうですが、じつはかつてないほどに「ふくよか」な体形を保っています。これはブダイのなかま特有の習性によるものかも知れません。ブダイのなかまは頑丈な歯でサンゴや岩をガリガリと噛み砕き、その表面の微細な藻類も食べます。今の水槽は以前のものよりも広く明るいため、多くの藻類が繁茂し、おそらくオビシメはこれも食べているようです。

 ともあれ小笠原を代表する魚といえばユウゼンやレンテンヤッコなどでしょうが、これぞ小笠原の魚といえる「オビシメ」にも注目してください。

写真:小笠原固有種、オビシメ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2014年09月05日)



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