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マタナゴの子どもが生まれました!
 └─2014/08/08

 2014年4月中旬、水族園にマタナゴが搬入されました。搬入後の魚はまずバックヤードで餌付けをし、体力を回復させます。その後、状況を見ながら検疫(寄生虫の駆除や病気の治療)をした後、展示水槽に出します。マタナゴも準備が整うまではバックヤードずまいです。

 マタナゴはウミタナゴ科の海水魚です。浅海の岩礁域に生息し、成長すると体長は約25センチに達します。「卵胎生」(受精した卵がお腹の中で孵化し、子どもが幼魚の状態で生まれる)という特徴があり、一度に13尾前後の幼魚が生まれます。

 到着したマタナゴの状態を確認したところ、複数のメスのお腹が大きく膨らんでいます。子持ちの母親のようです。出産を期待しながらようすを見ていた5月下旬、マタナゴのいる水槽の一角に100尾ほどの小さな幼魚が群れを作って泳いでいました。全長5センチほどですが、大人のマタナゴにそっくりな姿をしています。

 幼魚はこまめに餌を食べる必要があります。そこで、効率よく餌が回る行きわたるように、幼魚だけを別の水槽に移して育てることにしました。その後もお腹の膨らんでいた他の個体が数日遅れて出産し、めでたく約120尾の子どもが集まりました。

 しかし、喜んでばかりではいられません。幼魚に餌を食べさせるという難問が立ちはだかります。育ち盛りの幼魚は十分な量の餌を食べないと、やせ細って死んでしまいます。また、餌の好き嫌いが激しいため、さまざまな餌を試し、幼魚がよく食べる餌を探し出さなければなりません。

 また、食べ残しが出ると幼魚に病気が発生しやすくなるので、食べきれる量を見きわめながら、少量の餌を何回も根気よく与えます。さらに、水槽の底はこまめに掃除をするなど、細心の注意が必要です。

 難問をクリアして育成すること2か月弱、幼魚に十分な体力がつき、餌やりの頻度を落としても問題ないと判断し、幼魚45尾を東京の海エリアの「アマモ場」水槽に出しました。数日で新しい水槽にも慣れ、元気に泳ぎまわっています。また、水槽の中には餌となる微小生物がいるらしく、マタナゴが餌を探すようすも見られます。無事にデビューしたマタナゴの幼魚を葛西臨海水族園でどうぞごらんください。

写真上:元気に泳ぎ回るマタナゴ
写真下:餌を探しているようす

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三浦絵美〕




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