ニュース
岩の上で仲良くくらすウメボシイソギンチャクたち
 └─2014/05/16

 日差しが日増しに強く感じられ、春から夏へと季節が移り変わるころになりました。気温が高くなるにつれて、海へ行く機会が多くなる方もいらっしゃることでしょう。磯の岩の上やすき間などに赤い色をしたイソギンチャクを見かけたら、それはウメボシイソギンチャクかもしれません。

 ウメボシイソギンチャクは、本州中部から九州の潮間帯に普通に見られるイソギンチャクです。潮が引いて水の上に出ているとき乾燥を防ぐため口をつぼめた姿は、その名とおり「梅干し」のように見えます。そして潮が満ちて再び水の中に入ると、餌を捕まえるために触手を花のように広げます。

 葛西臨海水族園の「渚の生物」の水槽には、浅い岩場の潮だまりを再現した所があり、岩の上にはたくさんのウメボシイソギンチャクが体を寄せ合うように密集しているのが見られます。

 イソギンチャクのなかまの繁殖の仕方には、「卵を産む」「体を分裂させる」など、いくつか方法があります。

 ウメボシイソギンチャクの場合は、親の体内の一部から作られた子どもたちを口から産み出し、同じ遺伝子をもった集団を作ることが知られています。

 またウメボシイソギンチャクは、すむ場所をめぐって、自分とは異なる遺伝子の集団を相手どり、刺胞と呼ばれる毒針を相手に押し付けたりしてケンカをすることがあります。しかし、「渚の生物」水槽で見られるウメボシイソギンチャクの多くは、もともとは一匹のイソギンチャクから代々繁殖によって作られた個体群のため、そのようなケンカは見られません。

 あまり目立たないので、かけ足で水槽を見ていくと見過ごしてしまうかもしれないウメボシイソギンチャクたちですが、じつはおもしろいこうした生態を思い出しながら観察してみてください。

写真上:岩の上に密集した「梅干し」のようなイソギンチャク
写真下:触手を花のように広げたウメボシイソギンチャク

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2014年05月16日)



ページトップへ