葛西臨海水族園で展示中のコオリウオ科の一種「オセレイテッドアイスフィッシュ(ジャノメコオリウオ)」の卵の孵化が、2013年5月7日から始まりました。その孵化して間もない仔魚の展示を開始します。
孵化した卵は、2013年1月12日に展示水槽内で産卵され、その後取り上げて育成水槽で飼育していたものです。
南極大陸周辺の海にすむコオリウオ科の魚が展示されている水族館は世界でも葛西臨海水族園だけで、オセレイテッドアイスフィッシュの産卵が観察されたのも
世界初です。本種の卵の発生過程が観察・研究された例はなく、今回の成果は大変貴重なものです。
※孵化の瞬間を動画でとらえました!(約20秒)
孵化開始日 2013年5月7日(火)
孵化個体数 および 大きさ 約20個体、体長21~23mm
(5月20日現在)
展示場所 葛西臨海水族園「世界の海」エリア
「南極海2」水槽特設ケース内
展示開始日 2013年5月23日(木)
展示予定個体数 3個体
産卵から孵化までの経緯
2012年12月末、展示中のオスが水槽底の砂を尾びれなどで掘り、産卵床と思われるすり鉢状の窪みをつくり、また体の一部が黒く変化し、繁殖期に現れる「婚姻色」と思われたため、非公開の予備水槽のメスを同居させました。
その後、両個体が一緒になって回転するように泳いだりする行動がみられたため、産卵が近いと判断し、夜間はビデオカメラで行動を記録しました。2013年1月13日朝、水槽内に数百個の卵(直径4.4mm)を発見し、ビデオを確認したところ、1月12日23時13分に産卵があったことがわかりました(
ニュース記事はこちら)。
オスを予備水槽へ取り出した後、メスは産卵床の中心で卵を保護していましたが、受精卵と未受精卵が混在していたため、卵の腐敗を避けるために全ての卵を水槽から取り出し、非公開の育成水槽で飼育を続けていました。育成水槽の水温はおよそ2~3度、孵化に要した日数は最短114日でした。本種の生息海域の水温はもう少し低いことから、自然状態で孵化に要する日数はもう少し長いものと考えられます。
孵化仔魚の特徴および現在の状況
仔魚は孵化直後から、成魚での特徴である大きな口が開いており、歯も確認することができます。腹部にはまだ大きな卵黄を持っており、しばらくはここから栄養を得てこれを吸収して成長するものと考えられます。
本種の孵化初期の生態については研究例がないものの、体長34~56mmのやや成長した仔魚をプランクトンネットで採集した研究例では、胃の中から主に小型のオキアミ類が多く見つかっています。当園でも、アミ類やブラインシュリンプなど、小型の甲殻類の給餌を試みましたが、今のところ摂餌は確認できていません。
現在、水槽底にいることが多いものの、時々水面まで泳ぎ上がる様子が観察されています。上述の研究では、大型の仔魚は表層から水深400mの広い範囲で採集されていますので、水底から離れ、浮遊生活を送るものと考えられます。
<関連ページ>
2011年08月22日記事
「世界初、透明な血液を持つ南極の魚まもなく公開」
2011年08月24日記事
「透明な血液をもつ南極の魚「コオリウオ」公開!」
2011年09月16日記事
「何を食べるの? オセレイテッドアイスフィッシュの餌」
2013年01月18日記事
「世界初!血液の透明な魚「コオリウオ」が水槽で産卵」
<関連動画>
東京ズーネットBB「世界初! ジャノメコオリウオ登場」
(2011年08月撮影)
写真:孵化直後の仔魚
(2013年05月21日)