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真冬のチゴガニの求愛ダンス?
 └─2013/01/11

 寒いですね。この時期は、私たち人間だけでなく、身近な多くの生き物もあまり活動しません。身近な自然の一つ、干潟でも同様で、暖かい時期の干潮時には多くの生き物で賑わっていましたが、今は閑散としています。とくに、カニのなかまは地中に潜り冬眠中です。

 そんな干潟でカニを代表するのが、甲羅の幅が1センチほどの小さな「チゴガニ」です。チゴガニは、宮城県以南の泥干潟に巣穴を掘って生活するカニで、春から秋の暖かい時期の干潮時に巣穴から出て活動をします。

 葛西臨海水族園東京の海エリアのカニ水槽では、秋の一時期には巣穴に潜って見られなくなったチゴガニも、真冬の今、少しずつ見られ始めています。チゴカニはとても臆病なので、水槽前ではなるべくじっとして動かずに観察してください。ハサミを器用に使い干潟の微細な藻類などを摘んで食べたり、運がよければ、両方のハサミを同時に振り上げる行動も見られます。これは、ハサミが白く大きいオスが、メスに対して行う求愛のダンスです。

「カニ水槽の『砂だんご』の正体は?」(2012年09月10日)
「揺れ動く『白い絨毯』」(2011年08月19日)

 この寒い時期に活動するとは、ちょっとおかしいと思いませんか? じつはこの水槽では、チゴガニの求愛など興味深い行動を、なるべく1年を通して見ていただこうと、水槽内の気温・水温を温めてチゴガニが活動しやすいようにくふうしています。さらに、干潟の泥の中も特別な床暖房装置があり、巣穴もあったかです。休む時期があまりなくチゴガニにはちょっとかわいそうですが、今の時期にチゴガニの活動が見られるのはこういうわけなのです。

写真上:カニ水槽、(左)チゴガニがいる干潟エリア
写真下:ディスプレイをするチゴガニ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2013年01月11日)



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