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見なきゃ損! 深海のセンジュエビ
 └─2012/04/13

 今回は葛西臨海水族園「東京の海」エリアにある実験展示コーナーに登場した桜色の「センジュエビ」の話です。センジュエビはインド太平洋および大西洋に広く分布し、水深289〜2055メートルで生息が確認されている深海性のエビです。水族園で展示するのは初めてで、ほかの水族館でもなかなか生きた状態で展示されることはありません。というのも、採集・飼育が難しい深海生物の中でも、センジュエビは滅多に採集できない種だからです。

 このエビの形態には大きな特徴がいくつかあります。1つめは体の形です。体長十数センチメートルの体は、全体的にペタンコで、一見して只者(タダエビ?)ではないことが分かります。水槽内ではたいてい砂に潜っていて、掘り出しても、すぐに後ろの脚でもぞもぞと砂を掘り潜ってしまいます。隠れたがりのセンジュエビにはぴったりの形なのでしょう。

 2つめは退化した眼です。暗い深海では、わずかな光をどうにかして取り入れようと眼がとても大きくなる生き物がいる一方で、「視覚になんか頼らないぞ」とばかりに眼が退化した生き物もいて、センジュエビは後者の方です。

 3つめは脚です。体の前方に付いている細長〜い折り畳み式のハサミ脚(鋏脚:きょうきゃく)は、伸ばすと体と同じくらいの長さがあり、曲げ伸ばしの動きは機械のようで独特です。また、ハサミ脚の後方3対の脚の先端にもハサミがあります。その姿はまるで千手観音のようで、昔の人が「センジュエビ」と名づけた気持ちがわかります。

 あまり動かない生き物なので、地味!と思われるかもしれませんが、なかなか観察する機会がないこの面白いセンジュエビを、ぜひ見に来てください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕

(2012年04月13日)



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