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葛西の海に現れたカライワシとワカサギ
 └─2011/01/07

 葛西臨海水族園では、月に一度、水族園の目の前に広がる「西なぎさ」で小型の地曳網による生物調査をおこなっています。 今回は、その調査で採集された、葛西の海では珍しい魚2種をご紹介します。

◎カライワシ

 2010年9月20日の調査でのことです。9月後半とはいえ気温は27.7℃と高く、「西なぎさ」は水着や裸になって遊ぶ子どもたちでにぎわっていました。当日は網を3回曳き、その3回目の網に、全長20~25センチメートルほどの魚が5尾入りました。この網に入る魚にしてはかなり大きなものです。水族園に持ち帰って図鑑で確認したところ、「カライワシ」という魚でした。

 カライワシは、主に沖縄やハワイなどの暖かい海に分布し、全長90センチメートルほどに達します。幼魚は汽水域や淡水域にも侵入し、利根川河口でも見つかった記録があります。

 細長い体に銀色の鱗が美しく輝く姿がイワシに似ていることから「カライワシ」という名前がついています。

しかし、カライワシはイワシのなかまではありません。カライワシが孵化したばかりの姿は、成魚とは全く違っていて、透明で柳の葉に似た形をしています。これはレプトケファルス幼生(葉状仔魚)と呼ばれ、ウナギでも知られています。

 水族園の地曳網調査は1999年から継続しておこなっていますが、カライワシが確認されたのは2006年9月に全長4センチメートルほどのレプトケファルス幼生が1個体採集されたのみです。そのほかの調査や報告でも、東京湾ではわずか数個体しか記録されておらず、東京湾では珍しい魚といえます。

 現在、この採集されたカライワシを「東京の海」エリアで展示しています。国内の水族館での展示例は少なく、生きたカライワシを見るのは初めてという職員も多くいます。今後、カライワシが大きくなり、ほかの生き物へ影響が出ると展示が続けられない可能性もあります。ぜひお早目にごらんください。

写真上:採集された個体
写真中上:カライワシのレプトケファルス幼生

〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕

◎ワカサギ

 2010年12月2日の調査では、地曳網にめずらしく約60尾のワカサギが入り水族園に運びました。

 ワカサギというと山間部の湖で水面に張った氷に穴を開けて釣りをする「ワカサギの穴釣り」が有名ですが、本来は霞ヶ浦などの海水と淡水が入り混じった水域に生息しています。ワカサギは淡水だけでも繁殖できるため、全国各地の湖沼に移植され、冬場の数少ない「釣りの対象」となり、地元の特産品として定着しています。

 1982年から2002年まで実施した都の地曳網調査では、採集されたことはありません。葛西で実施している地曳網調査でも、記録では1999年と2008年にそれぞれ1尾が採れただけです。過去には江戸川水系で放流されたことや、千葉県側の東京湾に流入する水系でも放流が実施されており、採集されたワカサギが自然に繁殖したものかどうかまではわかりません。

 今回東京湾で採集されたワカサギを展示しているのは「東京の海」エリアの2階にある「葛西の海」水槽です。ワカサギはちょっとした音や振動にも反応して驚いてしまうような魚です。観察する際には水槽をたたいたり、騒いだりしないで、そっと観察していただくようお願いします。

写真中下、写真下:採集されたワカサギ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 橋本浩史〕

(2011年01月07日)



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