先日、お世話になっている鹿児島の漁師さんから葛西臨海水族園にある生き物が送られてきました。私がその生き物を目にするのは2回目で、初めて見たのは2年ほど前でした。当時、その何とも奇怪な姿に大きな衝撃を受けたのを今でも覚えています。
その生き物とは、ヤマトメリベというウミウシのなかまです。大きなものでは体長50センチメートルにも達する大型のウミウシです。体はゼリーのように透き通り、背中には7対の突起がついています。
そしてひときわ目をひくのが、体の前方についている大きな袋状のもの。これは、餌となる生き物を捕えるときに使う網のようなものです。袋を大きく広げ、小さな魚やエビなどを包み込むようにして捕えます。その後、袋の縁についた「くし」状の突起をフィルターにして水だけを吐き出しながら、捕えた生き物を真ん中にある口へと送りこむのです。
変わっているのは姿だけではありません。水槽に入れたヤマトメリベを観察していると、さかんに体をくねくねと動かし水中を泳いでいるような動きをするのです。そのせいか、水中を漂うクラゲに間違われることもしばしば。
さらに不思議なことは、体にふれると柑橘系のにおいを放つそうです。むやみにさわることはできませんが、機会があればそのにおいを体験してみたいものです。
現在、ヤマトメリベは「東京の海」エリアで展示しています。ヤマトメリベの詳しい生態は分かっておらず、捕獲や飼育された例も数少ない非常に珍しい生き物です。水族園で展示するのは2003年、2008年に続き3度目ですが、できるだけ多くの人に見てもらえるよう、がんばって飼育に取り組みたいと思います。
※東京ズーネットBBの動画
「ヤマトメリベ」(2003年05月撮影)
写真上:「くし」状の突起がついた袋を広げたところ
写真下:袋は閉じられている
〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕
(2010年11月12日)