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はな子とカルガモ──2007/04/06

◎文化園四季折々

 はな子といえば、井の頭自然文化園の長老、今年60歳をむかえたおばあちゃんゾウ。今でも人気者のはな子ですが、井の頭にやってきて以来、ずっと1頭ですごしてきました。本来群れでくらす動物なので、さびしい思いもしているかもしれませんが、私たち飼育係をなかまと思うことで乗りこえているかもしれません。そんなはな子にここ数年、冬から春限定の友だち(というかライバル? それともオモチャ?)が現われました。

 はな子の運動場のとなりには熱帯鳥温室があります。その温室の前の池に、ここ数年、繁殖期になるとカルガモのペアがやってくるようになりました。カルガモは毎年ここでヒナを育てています。しかし、動物園内とはいえ、きびしい野生の環境です。天敵のカラスやノラ猫におそわれることもあり、カルガモも緊張しています。本来なら、もっと広い池の方が安心するのでしょうが、子育てに適したところというのは意外に少ないようで、なかなか場所を変えようとしません。

 そんなカルガモのペアが目をつけたのが、すぐそばにある少し広めの水面です。深い堀があるので外からの敵を防いでくれますし、昼間は大きな動物が1頭いるだけで、意外に静か。そう、そこは、はな子の運動場の中のプールです。こうしてカルガモは、卵を産むまでのあいだ、プールと池を行ったり来たりしてくらすようになりました。

 はな子の運動場には、はな子のえさのおこぼれをねらって、ハトやカラス、ヒヨドリなどがやってきます。こうした動物に対し、はな子も機嫌が悪いと鼻で軽く追い払うようなしぐさを見せますが、基本的にあまり気にしません。

 しかし、カルガモが相手だと、からだが大きくて目ざわりなのか、からかっているつもりなのか、少々派手に追い払うことがあります。そのとき、はな子が使うのが、運動場に置いてあるゴムホースです。このホースはもともと、はな子が振り回して運動したり、背中に乗せてからだをこすったりするための遊び道具です。

 ところが先日、はな子がホースをムチのように振り回し、カルガモを追い払っていました。はな子もカルガモをやっつけようとするわけではありませんが、何度追い払っても戻ってくるので、ちょっとカチンときたようです。

 カルガモがこの大きな動物の行動をどう感じたか、さだかではありませんが、少しはこりたのでしょうか、最近は、はな子が運動場にいる時間は遠慮しているようです。とはいえ、はな子にとって単調な生活の中で、こんな来客はよい刺激になっているのかもしれません。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 木崎恒男〕

(2007年4月6日)



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