◎文化園四季折々
先週お伝えしたように、井の頭自然文化園では、ジブリ美術館との共催で特設展「なぜおぼれない?──ミズグモや水生昆虫の呼吸法」を開催しています。文化園のお隣、三鷹の森ジブリ美術館では、オリジナル短編アニメーション『水グモもんもん』を上映中。その主人公「もんもん」のモデルである水生物館のニューフェイス、ミズグモについてご紹介しましょう。
ミズグモは、世界でただ1種類だけ、水中生活を営むクモとして知られています。ほぼ完全に水中で生活する珍しいクモで、お尻(腹部)に生えている細かい毛でお尻の周りに空気をまとわせることができます。それにより:
- 水中移動時にその空気を「酸素ボンベ」として利用し、呼吸する
- 空気を巣へ運び、水中に空気室を作って長期滞在する
という独特の方法で、一生のほとんどを水中で過ごします。
動作はというと、水草を足場として移動しているときはクモらしく機敏なのですが、水中を移動するすがたは、泳ぐというより、おぼれているかのよう……。腹側についた空気のせいで仰向けになってしまうのについ、笑ってしまいます。映画『水グモもんもん』では、魚に食べられそうになったヒロインのアメンボをもんもんが猛スピードで追いかけて助けるシーンがありますが、本物のミズグモには、それほどかっこよい救出劇は無理そうです。
餌はおもにアカムシを与えています。クモは消化液を分泌して獲物を体外で消化します。ですから、水中では食事ができません。ミズグモは餌を水中の空気室に運び、中に頭あるいは体全体を入れて食べるのですが、手近な場所に巣がない場合は、捕まえた餌をくわえたまま巣を作ることもあります。
──そんなユニークなクモの生活をのぞいてみませんか? 今までクモに対してよいイメージをもっていなかった方も、じっくり見ていると愛嬌のあるすがたに魅力を見いだせるはず。この機会にぜひ、ミズグモに会いに来てください。
※特設展は、2006年8月12日(土)から10月1日(日)まで。井の頭自然文化園の水生物館で開催しています!
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 福士志乃〕
(2006年8月18日)