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貴重映像! 夜に響くミゾゴイの声
 └─ 2023/03/28
 「ブ・ウォー、ブ・ウォー」と喉元を大きく膨らませ低い声で鳴いているのは、水生物園で単独で飼育しているミゾゴイのオスです。この独特な鳴き声から、古くは「うめきどり」と呼ばれることもあったミゾゴイですが、夜道を歩いていて暗闇からこんな鳴き声が聞こえてきたら、少し怖くなってしまいますよね。


ミゾゴイ(オス)の鳴き声

 ミゾゴイはうっそうとした森のなかにすむサギのなかまで、4月上旬に東南アジアから子育てのために日本に渡ってくる渡り鳥です。繁殖はほぼ日本だけでしかおこなわれていないことが知られており、オスは渡来直後から夜間にこのような声で鳴き、なわばりを確保して結婚相手になるメスを探します。

 毎日、日没直後の決まった時刻から鳴き始め、長いときには朝方まで続くこともあるそうで、夜にさえずるのは天敵の攻撃を避けやすくするためと考えられています。ペアが成立するとパタリと鳴かなくなるので、その独特な声を聞くことができるのはごく限られた期間です。

 今年は暖冬だったこともあってか、この個体は3月中旬ごろから鳴くようになりました。鳴くときは定位置(ソングポスト)があるようで、止まり木の枝のいちばん高いところがお気に入りです。一般に鳥類の多くは声帯がないかわりに「鳴管めいかん」という気管からできた部位を振るわせて声を出しています。低音が遠くまで響き渡るミゾゴイの発声のしくみは解明されていませんが、大きく膨らませた喉元を使い反響させているようにも見えます。ちなみに、水生物園にはすでにペアになっているオスもいますが、このような鳴き声は出しません。

 ミゾゴイは、生息数の減少から絶滅危惧種に選定されていますが、その詳しい生態はあまりよくわかっておらず、動物園での保護繁殖が進められています。多くの謎に包まれたミゾゴイの実際の声を聴いてみたい方は、18時ごろから20時ごろ、井の頭恩賜公園の弁天橋から水生物園の方に耳を傾けてみてください。いつまで鳴くのかは定かではありませんが、もしかしたらメスを呼ぶ「うめきどり」の鳴き声が聞こえるかもしれません。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 下川〕

(2023年03月28日)



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