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人工授精によるヤマドリの繁殖
 └─ 2022/09/06
 井の頭自然文化園では、コシジロヤマドリが5年ぶりに繁殖しました。人工授精による繁殖は9年ぶりとなります。今回は人工授精の取組みについてご紹介します。

 3~4月の繁殖期、ヤマドリのオスは気性が激しくなり、なわばりに侵入するものを追い払うようになります。この時期のオスは同種であるメスでさえも攻撃するほど気性が激しいため、雌雄の同居は簡単ではなく、注意深く取り組む必要があります。2017年は現在の展示場で同居させて繁殖に成功したため、2019年からも雌雄を同居させ自然交配による繁殖をめざしてきました。しかし、3年間に得られた卵はすべて無精卵だったため、今年は人工授精に取り組むことにしました。

 ヤマドリの人工授精は、精液採取と精液注入の2つの手順からなります。まず精液採取は、オスの背中側を手でなでて刺激してから総排泄腔をつまんで射精させる「マッサージ法」で実施しました。その後すぐに、採取した精液を希釈してからシリンジを使ってメスの卵管に注入しました。

 この方法で特に難しい点は、精液を採取する手技の修得です。そこで、人工授精に成功した経験を持つ元担当者に指導してもらいながら実施しました。そのようすは動画でご覧ください。


 今年の産卵は3月30日~4月25日に9卵確認でき、そのうち有精卵は3卵でした。有精卵のうち、1卵には卵殻にヒビが入っており、孵化までのあいだに発育が停止する中止卵でした。残りの2卵は既知の孵化日数のとおり25日目に無事に孵化しました。残念ながら生まれたひな2羽のうち1羽は肺炎で死亡してしまいましたが、もう1羽は順調に育ち、間もなく成鳥の羽に生えかわります。

 今年生まれのヤマドリの展示場所は、ヤマドリ舎の向かって右から3番目のケージです。この時期にしか見ることのできないヤマドリの幼鳥をぜひ見に来てください。

2日齢のひな
幼鳥

〔井の頭自然文化園飼育展示係 杉田務〕

(2022年09月06日)



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