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水生物園のニホンコウノトリ
 └─ 2018/03/15

 井の頭自然文化園の水生物園で、2017年12月26日からニホンコウノトリの展示が始まりました(来園のお知らせ)。

 以前は動物園(本園)の大放飼場で展示していましたが、水生物園では初めてのお目見えとなります。多摩動物公園からやってきた、この8歳のオスのようすをお伝えします。

 ニホンコウノトリは日本に生息する鳥の中では大型で、白色の体に黒色の翼とくちばしのコントラストが美しく、脚と目の周りが赤色なのが特徴です。長いくちばしは水中や泥の中のえさを探索するのに適しています。水田の小魚やカエルのほか、草地では昆虫、ヘビなどを食べています。当園ではワカサギとアジを給餌しており、長いくちばしを使って小さなワカサギも器用に口の中に運ぶようすが観察できます。

丸太の上にたたずむ
ニホンコウノトリ


えさを食べるようす

 来園してきた頃は、警戒心が強くてなかなか新しい環境には慣れず、落ち着きなくせわしなく動いていました。隣のケージに行こうとして、フェンスに体をこすりつけ、羽を痛めてしまうこともありました。

 そこで、フェンスが見えづらくなるようにネットを張ったところ、無理に隣のケージに行くような行動はしなくなりました。他にも植栽を剪定し動ける空間をつくったり、ケージ内に丸太を設置したりするなどしたところ、落ち着きを見せ、丸太の上にいることも多くなってきました。この環境にもやっと慣れてきたようです。


ネットを張ったフェンス

 1971年までは日本の空を飛んでいたニホンコウノトリですが、一度野生から姿を消した経緯があります。江戸時代末期には各地で繁殖していましたが、明治時代に入ると狩猟により数を大きく減らし、その後、開発や水質汚染による生息環境の悪化、農薬の使用で生息数は減少しました。また戦時中の大木(マツなど)の伐採により繁殖するための営巣地の多くも失いました。

 そこで動物園では野生復帰のために繁殖を目指し、1972年から飼育を開始しました。野生復帰などの生息域内保全と、動物園での飼育などの生息域外保全をつなぐその役割については、ケージ前に新たな解説看板を設置予定です。実物のニホンコウノトリを見ながら、現状や歴史も知ってもらえたらと思います。

〔井の頭自然文化園水生物園飼育展示係 東條裕子〕


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