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続々・新たな視点で見てみると[9]──土の中の白い成虫:ゲンゴロウの羽化
 └─2017/11/24

 井の頭自然文化園の水生物館で育てたゲンゴロウの映像を「孵化」「摂餌(1令幼虫)」「脱皮」「摂餌(3令幼虫)」「土への潜行」「蛹化」と続けてきたゲンゴロウの成長を追うシリーズですが、最後に羽化のようすをお伝えします。

 前回お伝えした蛹化が終了してから14日後、蛹室の中の蛹に変化が現れました。蛹化の時と同じく、それまで仰向けに近い状態だった蛹が、突然うつ伏せの状態になったのです。ゲンゴロウの蛹化から羽化までの期間は9~13日と書いてある本もあり、ちゃんと羽化してくれるか心配になっていたところでした。


【動画】蛹化の時と同じく蛹は羽化直前にうつ伏せ状態になる。
この状態から蛹の皮を脱ぎ終わるまで40分ほどかかった


 蛹の皮は思いのほか薄く、比較的自由に形を変えられるようで、蛹の背中の皮が割れる前から中で上翅が伸びているのがわかります。背中の皮が破れると一気に上翅が伸び、脱ぎ終わると同時に翅が背中を覆っています。40分ほどかかって出現したのは、真っ白い全身に眼だけが黒々とした、かなり違和感のあるゲンゴロウでした。


羽化直後の成虫。まだ透明感のある上翅を透して下翅が見えている

 羽化後の体はまだ柔らかいので、新成虫はこのまま蛹室の中で5~7日ほど過ごし、体があるていど硬くなってから地上に這い出てきます。


左:羽化後約12時間。右:同約24時間。
12時間後にはまだ下翅が透けて見えるが、24時間後にはほぼ通常の色になっている

 今回はゲンゴロウの成長シリーズ最終回なので、「孵化」から「羽化」までの7シーンでダイジェスト動画も作ってみました。ぜひご覧ください。


【動画:ダイジェスト】ゲンゴロウの成長(ダイジェスト版)2分50秒


・これまでのゲンゴロウの記事
  続々・新たな視点で見てみると[3]──細長い卵から細長い幼虫:ゲンゴロウの孵化
  続々・新たな視点で見てみると[4]──大あごは高性能の注射針:ゲンゴロウ1令幼虫の摂餌
  続々・新たな視点で見てみると[5]──ひと皮むけて頭が育つ:ゲンゴロウ2令幼虫の脱皮
  続々・新たな視点で見てみると[6]──噛まれると痛い立派な大あご:ゲンゴロウ3令幼虫の摂餌
  続々・新たな視点で見てみると[7]──柔らかな地面が必要:ゲンゴロウ土への潜行
  続々・新たな視点で見てみると[8]──完全変態です:ゲンゴロウの蛹化

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2017年11月24日)


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