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続々・新たな視点で見てみると[7]──柔らかな地面が必要:ゲンゴロウ土への潜行
 └─2017/11/03

 「孵化」「摂餌(1令幼虫)」「脱皮」「摂餌(3令幼虫)」に引き続き、井の頭自然文化園の水生物館で育てたゲンゴロウの映像をお伝えします。

 3令幼虫になり、貪欲にえさを食べて日増しに大きくなった幼虫は、ある日ぱったりとえさを食べるのをやめてしまいます。このとき幼虫の体長は8センチほどにまで成長し、体も太くぽってりとしています。最初は「調子が悪くなったのか?」とあせりましたが、そのままようすを見ていると、飼育容器の中でそわそわと動き回り、なにやら出られるところを探しているようです。

 この状態の幼虫は蛹になるための準備が整い、上陸して土に潜ろうとしているところなのです。水生物館では湿らせた柔らかい土を別の容器に用意しておき、タイミングを見はからって上陸準備のできた幼虫を土の上に放します。


【動画】上陸準備が整った幼虫を湿らせた土の上に放すと、
しばらく動きまわったあと頭から少しずつ潜って行く


 幼虫は土の中で蛹になるための空間(蛹室:ようしつ)をみずから作ります。ゲンゴロウの場合は直径約4センチ、ピンポン玉ほどの丸い部屋で、内側の壁はきれいに整えられています。その後幼虫はほとんど動かなくなり、前蛹(ぜんよう)と呼ばれる蛹になる前の最終段階になります。


土に潜って1週間ほどしてから慎重に掘ると、蛹室の中で
じっとしている幼虫(前蛹)を見ることができる


 体の大きさに対して幼虫の脚はかなり貧弱に見えます。水中ではこれでも十分な感じでしたが、陸上を長く移動するには力不足です。自然の中で幼虫がくらす池の中の環境がいくらよかったとしても、まわりに柔らかい土の地面が無いとゲンゴロウは成虫になることができません。

 次回は昆虫ならではの劇的な変化、蛹への変態をお伝えします。

・前回の記事
続々・新たな視点で見てみると[6]──噛まれると痛い立派な大あご:ゲンゴロウ3令幼虫の摂餌」(2017年10月20日)

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2017年11月03日)


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