これは、井の頭自然文化園フクロウ舎に新たに表示された解説文です。
夏の暑さ対策のためにシロフクロウを冷房室に移し、空き室となった部屋にメンフクロウを展示し、展示を改修しました。
あらたな展示とは、フクロウの部屋の中にマウス(ハツカネズミ)3頭を同居させたことです。ただし、マウスのケージの上面は人工芝で覆われており、マウスはふだんフクロウの視線が届かない場所にいます。ただ一か所だけ、マウスが顔を出せる場所があります。そこは透明のカップで覆われており、ネズミが食べられてしまうことはありません。
動物園が誕生したころ、動物たちは狭い箱のような檻に入れられていました。時代を経て飼育スペースは広くなり、展示エリアの柵を取り除いた「無柵放飼式」へと改善され、さらに広いサファリ式の展示による展示も見られるようにもなりました。しかし、面積は広がりましたが、肉食獣は肉食獣、草食獣は草食獣と、分けて飼育されていることに変わりはありません。
さて、動物は繁殖や逃避、闘争、遊びなど、さまざまな行動をとりますが、重要な行動の一つが食物(獲物)を得ることです。
「命のつながりを伝える」ということを動物園の根底にある理念ととらえれば、それにもとづいた動物の配置や施設の設計があるはずです。たとえば、自然界では捕食者と被捕食者の生活圏は重なっています。たとえばライオンとシマウマが水辺を挟んで、至近距離でお互いの姿が見られるよう工夫することで、野生の日常を動物園でも再現し、真の野生の表情や行動を引き出すことができるのではないでしょうか。
今回、メンフクロウとマウスの新展示にあたって、手作りではありますが、生態系を伝えるというコンセプトにもとづいた展示を試みました。ぜひご覧ください。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 室伏三喜男〕
(2015年06月19日)