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「いきもの広場」で遊ぼう[1]子ガエルの旅立ち
 └─2012/06/01

 井の頭自然文化園で毎週日曜日11時から12時にオープンしている「いきもの広場」では、毎回いろいろな生き物に出会うことができます。今、どんな生き物に出会えるのか、不定期ですがご紹介していきます。

 今回は、春から広場内の池をにぎわせているアズマヒキガエルのオタマジャクシです。早いものは2012年5月の第一週ころから、後足が出て、前足が出て、尾が吸収されるという劇的な変化が見られ、5月9日には上陸した子ガエルが観察できました。そして、5月13日(日)のオープン時には、池のまわりに小指の先ほどしかない褐色の子ガエルがひしめき合うように上陸していました。何百匹もいるのですが、とても小さいうえに土そっくりな色のため気付かずに通り過ぎる子どもたちに、「何かいるよ」と教えてあげると、声もなく見入る子、歓声を上げる子。反応はさまざまですが、ともかくその光景には心打たれるものがあります。

 さらにみんなが不思議に思うのは、変態直後の子ガエルがあまりに弱々しく見えることです。広場では「かんさつボード」の下や岩の隙間に、大きな大人のヒキガエルも見ることができます。「こうなるよ」と教えても、ズングリとした大人のカエルと針のような細い足の子カエルはどうにも結びつかないようです。

 じつは子ガエルの成長はとても早く、港区の国立科学博物館付属自然教育園でおこなわれた研究によれば、7〜9ミリだった体長は、変態後約3か月で約6〜7倍の5〜6センチに、来年の春には約9〜10倍の7センチほどにもなるそうです。弱々しく見える子ガエルも、これからぐんぐんと成長していくのです。

 5月末、子ガエルたちは池から移動し、広場内の落ち葉の下や「かんさつボード」の下にその姿を見ることができます。未だ弱々しさは変わっていませんが、一週ごとに少しずつ体が大きくなっていくようです。
 池にはまだオタマジャクシも残っていますので、もうしばらくは変態直後の子ガエルも観察できるでしょう。子ガエルをさがすなら、今がお勧めです。

 そういえば、ひしめきあう子ガエルを見て「すべて大人になったら……」と心配する女性の方が何人かいました。どのぐらいの子ガエルが生き残るのでしょう? 
 金沢市金沢城址に生息するヒキガエル1526匹を9年間追跡調査した名著、奥野亮之助氏の『金沢城のヒキガエル』によれば、オタマジャクシの時期の死亡率は90%、上陸後の子ガエルの死亡率は97%、さらに1歳になるまでに99.7%が死んでしまうそうです。頑張れ子ガエル!

写真上:ひしめき合って上陸した子ガエル
写真下:まだ弱々しい子ガエル

〔井の頭自然文化園教育普及係 天野未知〕

(2012年06月01日)



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