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アジアゾウはな子の近況[2]
 └─2011/05/27

 前回、井の頭自然文化園の日本一高齢のアジアゾウ「はな子」の飼育方法を直接飼育から準間接飼育に変更するとお伝えしましたが、その第2報です。

アジアゾウはな子の近況[1]

 飼育方法を変えるといっても、まったく飼育係の関与を断つというわけではありません。急な飼育環境の変化が動物に与える影響や、施設の改修の必要性などを考慮して、当面はこれまでの飼育方法に準じたやり方で、はな子のようすを見ながら、無理なく徐々に準間接飼育に移行していく方針です。

 ここでいう準間接飼育とは、動物との接触をまったく無くすということではありません。飼育係が動物と同じ空間でおこなっていたケアを、より安全に柵などのガード越しにおこなうことを意味します。

 当初は多少とまどっていたはな子も、一月半経過した現在は、状況を理解し、落ち着いて柵越しに飼育係に甘えてくるようになりました。

 はな子ファンの方々から寄せられた「はな子がストレスで不調になるのではないか?」「はな子のケアが充分になされなくなるのでは?」といった心配はないと思いますので、どうかご安心ください。

 さて、はな子に限らずゾウの出入舎は、安全管理の面から必ず複数の係員でおこない、とくに忙しい朝の出舎時には、係長級以上の監督者が立ち会って作業の監視にあたります。

 はな子の場合は、バックヤード(調理場)に設置されているモニターで、毎朝の出舎作業を見守るのですが、最近はただ見ているだけではなく、同時にバナナの皮むきを手伝うのが、園長・飼育展示係長の間でちょっとしたブームになっています。

 高齢のはな子には歯が1本しかなく、大好きなバナナも1本1本皮をむいて与えていますが、1日に20キログラム以上のバナナを食べるので、その手間はかなりのものです。片手で素早く何本も処理するベテラン飼育係の見事な「バナナむき」の技に刺激を受け、なんとかその域に近付こうと毎朝手伝うのですが、手ではバナナを、目はしっかりとモニターを追わねばならず、なかなか「免許皆伝」には至りません。忙しい飼育担当者の仕事を少しでも軽減させたいと願う、上司の優しい心遣いから発したブームといえば聞こえはいいのですが、実際は、ある朝モニターを見ている園長に、飼育班長が発した「忙しいんだから、ただ見てないで手伝ったら」の一言が発端だということは、秘密にしておきましょう。

 そんな調理場で繰り広げられる人間模様を知ってか知らずか、今日もはな子は特訓の成果のバナナをおいしそうに食べています。どうかみなさん、ご来園のうえ元気なはな子の姿を楽しんで、これまで以上の応援をお願いします。

〔井の頭自然文化園飼育展示係長 山本藤生〕

(2011年05月27日)



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