ニュース
イソギンチャクといれば安全?クマノミ
 ──葛西 2006/09/08

 敵になるような大きな魚がいない水槽でのんびり?暮らすクマノミを見て、「こんな小さな魚が、イソギンチャクといっしょにいるだけで本当に大きな魚に食べられてしまわないのかな?」と思ったことはないでしょうか。飼育係である私自身、ちょっとばかり疑っていたのです。

 イソギンチャクといっしょに生活して自分の身を守ることで有名なクマノミは、展示の“主役”をはれる魚なので、水族館では小さな水槽を使い、クマノミを中心に展示するのがふつうです。葛西臨海水族園でも、開園以来、「伊豆七島の海」にある、比較的小さい3トンほどの水槽で、クマノミを主役にして展示しています。

 約3年前のこと、クマノミのなかまであるカクレクマノミを主人公にしたアニメ映画が大ヒットしましたが、これに合わせて、水族園でも「南シナ海」の水槽にカクレクマノミを脇役として加え、長年の疑問を解決してみることにしました。水槽は幅約7メートル、水量50トンの大型です。同居する魚は全長 1.5メートル、体重約30キログラムもある大きなハタのなかまタマカイや、全長約2メートルのニセゴイシウツボなど。全長4~5センチしかないカクレクマノミが襲われたら、ひとたまりもない大型魚ばかりです。

 擬岩の上にイソギンチャクを置き、しっかりくっついたことを確かめて、そっとカクレクマノミのペアを放しました。念のため、職員が近くの岩陰に潜って待機していましたが、体の大きな魚たちは、興味深そうにイソギンチャクとクマノミのようすを見に来たものの、しばらくすると次々と去って行きます。本能なのでしょうか、学習の結果なのでしょうか。

 イソギンチャクにしっかり守られたカクレクマノミに、手を(口を?)出す魚は、その後も観察されていません。イソギンチャクが調子をくずしたときを除き、カクレクマノミの展示は現在も続けています。

 大きな水槽の中ではお客さんもカクレクマノミをなかなか見つけられないかな、と心配していましたが、子どもたちは水流になびくイソギンチャクの白い触手を手がかりに、小さなカクレクマノミをしっかり見つけています。みなさんもぜひ、この“隠れた“主役を探してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 多田諭〕

写真上:イソギンチャクといっしょのカクレクマノミ
写真下:大きなタマカイがいても、カクレクマノミはだいじょうぶ

(2006年9月8日)



ページトップへ