ニュース
多摩の虫ごよみ──穴掘り名人の災難
 └─多摩  2016/09/09

 近頃、多摩動物公園の園内で地面に穴を掘っては埋めていく姿が見られるのをごぞんじですか? その名はクロアナバチ。穴を掘り、幼虫のために麻酔をかけて捕まえてきた獲物を穴の中に詰め込み、獲物に卵を産みつけてから穴をふさぎます。昆虫には穴掘り名人がいくつか知られていますが、クロアナバチもその一つです。

 ある日、昆虫園のそばの地面に穴を見つけました。まさにクロアナバチが穴掘りの真っ最中。中に入って前脚で器用に砂をかき出し、後脚で後方に砂を蹴り飛ばす、こんな作業を何度も繰り返していました。穴は成虫がぴったり入れるくらいの大きさしかなく、砂をかき出すときはバックしながら出てきます。

昆虫園のそばで発見した穴
穴を掘るクロアナバチ

 見事な穴掘り芸に見とれていると、穴の直径と同じ大きさの小石を掘り出したしたらしく、出口まで持って来て外に引き出そうとした瞬間、なんと、小石がピタッと引っかかり、穴の入口をふさいでしまったのです。

 クロアナバチは大あわて。はじめは穴のまわりを飛び回っていました。そのうち意を決したかのように、小石を抜き取ろうと必死に引っ張り始めました。いろんな方向から試して、小石の角度を少し変えることに成功し、また何度も引っ張って、少し休んで、また引っ張って……やっと取り出すことに成功!


【動画:穴の出口近くに引っかかってしまった小石を懸命に引っ張り出そうとするクロアナバチ(約45秒)】

 その小石を憎らしげに(←勝手な想像ですが)後脚で蹴り飛ばすと、何ごともなかったかのように穴掘りを再開しました。クロアナバチにとっては、とんだ災難だったことでしょう。その後は無事に進んだようで、翌日にはきちんと穴がふさいでありました。クロアナバチの名人芸に感心した一幕でした。


クロアナバチが穴から引っ張りだした小石

(2016年09月09日)


ページトップへ