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続・新たな視点で見てみると(50)ゼリー状浮遊物体──ミドリフサアンコウの産卵
 └─葛西  2015/01/30

 お久しぶりのこのシリーズです。今回はなんと50回なんですね。記念の回にふさわしいネタを待っていたというわけではないのですが、今回の映像はおそらく世界初のものです。

 「世界の海」エリアの深海生物コーナーには、比較的小型の深海生物を展示している「深海の生物1」水槽があります。2013年12月、この水槽でゼリー状の物体が水面に浮いているのが発見されました。この物体は透明に近く、光のあたる方向によってはかなり見えにくくなります。とても柔らかく、触ると簡単に形を変えますが、中をよく見てみると、小さな卵がたくさん含まれていました。

 
左:発見されたゼリー状物体  右:拡大するとたくさんの卵


 この物体の正体は、卵帯(らんたい)と呼ばれる魚の卵の集合体でした。この水槽で展示している生物で、このような卵を産む可能性が高いのは、アンコウのなかまに近いミドリフサアンコウです。


ミドリフサアンコウ:腹びれが見える珍しいポーズ


 アンコウのなかまは、たくさんの卵が透明なゼラチン質につつまれた、卵帯とよばれる帯状のかたまりを産むことが知られています。水族園でも「北アメリカ東部」水槽で展示しているグースフィッシュが長さ8.7メートルもある卵帯を産んだことがあります。

・記事「グースフィッシュが卵を産みました」(2010年3月12日)

 しかし、ミドリフサアンコウがどのような卵を産むのかについて書かれた報告は見たことがないので、実際に確かめてみることにしました。ところが、そうこうしている間に2013年の産卵シーズンは終わってしまい、2014年11月になってようやくビデオ撮影に成功することができました。ミドリフサアンコウの産卵が観察されたという話は聞いたことがないので、おそらく世界初の映像になるはずです。



 水族園では裏のストック水槽も含めて、これまでに24回の産卵が確認されています。しかしいずれの卵も発生が進むことは無く、仔魚は産まれませんでした。現在は水槽に大小複数のミドリフサアンコウを飼育するなどして、受精卵を得るべく努力をしています。

・関連記事「新たな視点で見てみると(5)スローモーションで見るアンコウの摂餌Part 2」(2007年8月3日)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2015年01月30日)


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