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アマモ場にくらすヒメイカの展示
 └─葛西  2015/01/17

 波おだやかな海の入り江や遠浅の海岸の砂地には、海の生き物たちにとって大切な関わりのある「アマモ場」が見られることがあります。海草のなかまのアマモが生い茂るアマモ場は、いろいろな生物がくらす餌が豊富にあるところであり、またアマモの草原が隠れ家となる安全な場所でもあります。そのため「海のゆりかご」とも言われ、多くの生き物たちが幼い時期を過ごすのに利用しています。

 「東京の海」エリアの2階には、そのようなアマモ場を再現した「アマモ場の小さな生き物」の水槽があります。アマモ場にくらすタツノオトシゴやオクヨウジ等の魚や、緑色の体色が保護色となり、アマモの中では見つけにくいツノモエビ等を飼育しています。最近、この水槽にイカのなかまのヒメイカを展示しました。


 ヒメイカは成長しても胴体の長さが2センチくらいまでにしかならない世界最小のイカです。アマモ場等にくらし、ふだんはアマモの葉にくっついている姿がよく見られます。ヒメイカの胴体の背中側(ストロー状の「ろうと」の反対側)には粘液を分泌する細胞があり、その粘液でアマモに張り付くことができます。ヒメイカのえさとしてイサザアミを水槽に入れると、ヒメイカはアマモから離れ、えさにそっと近づき、10本ある腕のうち、捕食時には長く伸びる「触腕」と呼ばれる2本の腕を使って素早くキャッチします。その後、ふたたびアマモに張り付いてから、ゆっくりと食事をするようすが見られます。

 イカのなかまは体表にある色素胞を使って体の色を素早く変えることができます。アマモの上のヒメイカを探すと黒ずんでいる個体や、半透明な体がアマモの緑色に溶け込んで上手なカムフラージュとなっている個体やアマモとは体色が異なる個体を見ることができます。

 
左:アマモの葉の上のヒメイカ 右:ヒメイカの卵

 ヒメイカの繁殖はアマモ場でおこなわれ、メスはアマモの葉の上に腕を上手に使って卵を1粒ずつ産みつけます。運がよければ、孵化した小さな赤ちゃんイカを見ることができるかもしれません。アマモと関わりながらくらしているヒメイカをじっくりとご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2015年01月17日)


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