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ミナミコアリクイ「アイ」の第2子「あさひ」誕生
 └─上野  2014/12/12

 2014年5月1日の夕方、ミナミコアリクイの「アイ」が体重 154グラムの小さな赤ちゃん(通常300〜500グラム)を出産しました。昨年7月15日に生まれたメス「ひなた」にきょうだいができたのです(性別不明)。赤ちゃんは「あさひ」と名づけました。


2014年5月1日、「あさひ」誕生


 アイは2頭目の出産ですが、ひなたのときと同様、子育てに関心がなく、また母乳があまり出ません。毛のない丸裸の赤ちゃんはすぐに体温がうばわれ、命に関わります。そこで、動物病院の保育器で育てることになりました。


5月17日。生後16日。特徴である舌、爪などが見える。


 哺乳瓶で猫用ミルクをあたえるのですが、犬や猫の赤ん坊は舌で乳首を挟み込んでミルクを吸うのに対し、コアリクイは長い舌を乳首の外に出してなんとも器用に飲みます。

 アイの母性本能を目覚めさせるために、初めのころは1日に数分間だけ、寝ているアイのふところに赤ちゃんをそっと戻して慣れさせました。アイは母乳が出ないものの、しだいに子への興味が増したらしく、ぺろぺろ舐めて世話をするようになりました。


5月30日。生後29日。


6月22日。生後52日


 おとなのミナミコアリクイの鳴き声を聞く機会はなかなかありませんが、赤ちゃんは何かを欲しているときは、小さな体で「ギャッ」とか「グェッ」といった声をあげ、しっかり自己アピールをしています。

 あさひは日に日に体重が増え、生後1か月頃、正常な出生時の赤ちゃんの体重(306グラム) にようやく追いつきました。すくすくと成長はしているのですが、今度は便秘が心配です。ふつうのコアリクイは、約3日に1回の頻度で柔らかめの糞をするのですが、あさひは最長で約1週間も排糞せず、便状も硬めです。猫用ミルクの成分が少し合わないのでしょう。ミルクの濃度を薄くし、オリーブオイルや整腸剤をミルクに加えました。また、お腹のマッサージや浣腸で排便を促すなど、いろいろな方法を試しました。さいわい常に食欲があり、最終的に、整腸剤とヒト用の難消化性の食物繊維などをミルクに添加することで落ち着きました。


6月29日。生後59日


 生後86日には自分でアボカドとグレープフルーツも採食するようになり、生後130日には完全に哺乳瓶を卒業しました。

 生後 150日頃になると母親との終始同居が可能になり、あさひはアイにベッタリです。すでにアイの体重の約2分の1以上(2.5キロ)。その巨体(?)でアイの背中に乗っかったり、ドスドスと音が聞こえてきそうなくらいのスピードで母親の後ろを付いてまわったり、食事中というのにジャンプして母親に飛びかかってちょっかいを出したり、とにかく元気いっぱいに動き回ります。

 そしていよいよ2014年11月11日、バードハウス2階に親子そろってデビューを果たしました。

 好奇心旺盛な赤ちゃんは、見る人を飽きさせないこと間ちがいありません!展示場ではロープをじょうずに渡ったり、さらにアクロバティックな行動を見せてくれます。元気でわんぱくな赤ちゃん「あさひ」の新しい動きをぜひ発見してください。

・あさひのお姉さん「ひなた」が生まれた頃のようす、そして「介添え哺乳」のようすを東京ズーネットBBで昨年ご紹介しました→「ミナミコアリクイ誕生

〔上野動物園動物病院係 林笑〕

(2014年12月12日)


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