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オシドリのちょっと変わった子育て
 └─多摩  2014/11/14

 多摩動物公園には、鳥たちと同じ空間に入って間近に観察することができる「ウォークインバードケージ」があります。2つのドーム型ケージが連結した施設で、インドサイ側のケージではオシドリの群れをニホンコウノトリやツル類といっしょに飼育しています。今年(2014年)春、オシドリの変わった子育てが見られたのでご紹介します。

 仲のいい夫婦を「おしどり夫婦」と呼びますが、実際のオシドリのペアは数年ごとに相手を変えることが知られています。10月に入り、美しい繁殖羽へ衣替えしたオスたちは、メスの気を引こうと胸をはって見せたり、冠羽や三列風切羽(翼の付け根近くに生える羽根)が特殊化した「イチョウ羽」をピンと立てて見せたり、さまざまな求愛行動を見せます(写真1)。


写真1:メス(右端)に求愛するオスたち

 一度ペアになっても、その座を横取りされないよう、オスはメスから片時も離れず、寄り添って過ごすようになります。野生では高木の樹洞の中などに9〜12個の卵を産卵し、28〜30日間の抱卵の後、孵化します。産卵時や抱卵中、オスは巣のそばで外敵からメスを守りますが、ひなが巣立つとペアを解消します。ひなは孵化後1日で巣立ち、40〜50日間は母親の後について生きる術を学びます。

 ウォークインバードケージでは、今年も3月末頃から産卵が始まり、4月には隣り合った2つの巣箱でメスによる抱卵を確認しました。以前、同居しているオオヅルがオシドリのひなを攻撃したことがあったため、巣箱の周りを高さ1メートルほどの柵で囲いましたが、5月中旬、1つの巣箱で6羽が孵化し、数日後には柵の外に出て、5羽が事故で死亡してしまいました。生き残った1羽を母親のもとに戻すと、あとをついて歩くようになりました。

 翌日とても面白い光景を目にしました。親子のあとを2羽の成鳥がボディガードのようにぴったりとくっついて歩いていたのです。1羽は隣の巣箱で抱卵していたメス、もう1羽は父親であるオスでした。

 どうやらこのメスはひなを自分の子と勘違いしてしまったようです。また、父親もなぜかペアを解消しませんでした。オオヅルという天敵がいる特殊な環境からひなを守ろうという気にさせたのかもしれません。この行動は6月中旬まで見られました(写真2、3)


写真2:ひなに寄り添う3羽のオシドリ



写真3:右が産みの親、左が育ての親

 それから半年、ひなはすっかり大人になり、他のオスに混じって美しい羽を披露しています。オシドリのつがいづくりは秋から2月頃まで続きます。立派に成長したひなと、オスたちによる賑やかなメス取り合戦を見に来てください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 下川優紀〕


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