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働き者のヤマガラたち
 └─井の頭 2014/11/07

 最近、井の頭自然文化園「リスの小径」のそこらじゅうに、トウミョウ(豆苗)のようなヒョロっとした芽が出ていることにお気づきでしょうか? ちょっと奇妙な風景です。じつはこれ、6月から9月にかけて新しく仲間入りしたヤマガラという小鳥たち5羽の仕業なのです。

 ヤマガラは、「カラ類」とよばれるシジュウカラやコガラなどと同じシジュウカラ科の鳥ですが、カラ類の中でも、背中とお腹の赤茶色があざやかで目につきやすい鳥です。園内にもまれに野生のヤマガラがやってくることがあります。

 ヤマガラには、植物の種子を土の中や木の幹の隙間などにたくわえる「貯食」をする習性があります。とくに貯食の行動が活発になるこの時期、貯め込まれたヒマワリの種がリスの小径内で次々と芽を出し、奇妙な風景をつくり出しているというわけです。

 餌台のヒマワリの種を一つくわえては地面に降り、くちばしで打ち込むようにして土の中に埋めていきます。5羽が毎日、餌台と地面のあいだを根気づよく何度も往復し、貯食しているのです。じつに働き者です。

 しかし現在、リスの小径に日本の野山の植物を増やそうと、山野草を少しずつ植えているところなのです。そこにヒマワリ畑ができてしまっては困ります。

 リスの小径の主役であるニホンリスもクルミを貯食しますが、ヒマワリの種を埋めたり、掘り返す姿は見たことがありません。

 ヤマガラの貯食する姿をみなさんに間近で見ていただけるのは嬉しいことですが、私は心の中で、「ヤマガラが埋めたヒマワリの種をリスが食べてくれればいいのに……」と思いながら、毎日ヒマワリの芽を摘んでいるのです。

写真上:ヒマワリの種を埋めるヤマガラ
写真中:芽を出したヒマワリ
写真下:ヤマガラは石の隙間にも種を埋める

〔井の頭自然文化園飼育展示係 高松美香子〕

(2014年11月07日)



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