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ソデグロヅルの近況[3]
 └─多摩  2014/08/01

 今年(2014年)もソデグロヅルの繁殖シーズンが終わりました。 ソデグロヅルの産卵時期は4月からの約2か月と短く、産卵中に採卵すると卵を産み足す習性もなく、1回に1〜2卵しか産みません。

 多摩動物公園で飼育しているソデグロヅルのペアは1995年から飼育している初代「緑ペア」と、2013年3月に大阪市天王寺動物園から来た「天王寺ペア」の2ペアです。2ペアとも交尾がうまくできないので、人工授精をおこなっています。

 以前の近況[2]でお知らせした天王寺ペアのその後ですが、昨年は産卵が見られず、今シーズンは繁殖期の終わりに近い5月19日に待望の産卵がありました。この卵は育雛舎に預け、人工授精は引き続き5月29日まで続けました。精液の状態もメスの状態も良好だったので、もう1卵産んでくれるといいなと思っていたところ、30日夕方に2卵目を産みました。もし有精卵だった場合、親に戻せるようにと親たちには擬卵を抱かせることにしました。ツルによっては擬卵に気づいてしまうのですが、天王寺ペアは問題なく擬卵を抱きました。

 しかし、1卵目は有精卵でしたが、ひなは卵中の気室までくちばしを出している状態で死亡し、2卵目も有精卵でしたが後期に発生が止まり、やはり孵化しませんでした。

 結果は残念でしたが、有精卵が取れたことや親が擬卵でも抱けたこと、抱卵時のようすが見られたことなど、来年の繁殖に向けて多くのことを知ることができました。

「ソデグロヅルの近況[2]」(2014年05月23日)

 初代緑ペアは毎年有精卵が採れ、子育てもうまく、今までにもほかのペアのひなを育てたことのあるベテランです。ただここ数年は、子育てがあまりうまくいっていませんでした。

 人工授精は天王寺ペアと同じく5月29日までおこないましたが、6月に入っても産卵は見らず、今シーズンは終了したものと思っていました。

 ところが、6月8日に卵を産んだのです。最終の人工授精は1週間以上も前なので無精卵の可能性が高かったのですが、とりあえず孵化日数(28〜29日)までは抱卵させようと思いました。

 そして、産卵から29日目の7月7日、昼前に餌を与えにケージに入ると座っていたメスが立ち上がり、なんとその足元から茶色い小さなものが転がり出たのです。「えっ、ウソ!?」と思わずつぶやいてしまったのですが、卵は有精だったのです。初代緑ペアがひなを育てるのは3年ぶりです。

 やはり、このペアは子育てが上手く、ひなは順調に育っています。ツルのひなの成長は早く、小さくかわいい時期はあっという間に過ぎてしまいます。すでに、人の膝丈ほどに成長してしまいましたが、久しぶりのソデグロヅルのひなをぜひ見に来てください。

写真上:ソデグロヅルの親の足元にひなが!(2014年07月07日撮影)
写真下:無事に成長しています(2014年07月21日撮影)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 土屋泉〕

(2014年08月01日)



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