夏が近づき、気温が高くなるにつれ、潮のひいた干潟にくらす生き物の多くは活発になります。
葛西臨海水族園東京の海エリア2階の「カニ水槽」でくらすチゴガニも、やはり暖かくなるにつれ活発に動き回るようすが観られるようになります。
水族園では、干潟の生き物たちが活発になってきた2014年5月末、チゴガニをはじめとした干潟でくらすカニのなかまを採集しました。採集場所は、東京湾に流れ込む河川の河口です。東京湾内には、河口付近に泥や砂が堆積した貴重な干潟が幾つか残っており、チゴガニやアシハラガニなど河口域を代表するカニ類がくらしています。
採集当日は朝まで雨が降っていたのですが、昼には晴れて気温も上がりました。例年、チゴガニが観察される砂泥のたまったポイントに着くと、辺り一面にはさみを振り上げるチゴガニたちが迎えてくれました。
チゴガニは、ハサミを振り上げては振り下ろす「ウェイビング」と呼ばれるダンスのような動きを、主にオスが繰り返しおこないます。この「ウェイビング」は縄張りを主張し、メスに求愛する目的があると考えられていますが、カニ同士お互いに釣られるのか、ほとんど同時にはさみを振ります。視界に入るチゴガニたちが同時に「ウェイビング」をする様は壮観で、干潟が本当にたくさんの生き物のくらす場所なのだと改めて感じました。東京湾の周辺で未だにこんな光景を見ることができるとはまさに感動的です!
カニ水槽では、周年チゴガニの飼育展示が可能になりましたが、今回採集した個体も加えたことで、とてもにぎやかになりました。さらに、最近の暑さでとても動きが活発になっており、盛んに「ウェイビング」をおこなう様子が観察できます。
小さな水槽ですが、多いときには20個体以上が同時にハサミを振り上げているのでなかなか見応えがあります。干潟の一部を切り取ってきたような楽しい展示になっていますので、ぜひ見に来てください。
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「揺れ動く『白い絨毯』、カニ水槽から連想してみては?」(2011年08月19日)
写真上:ハサミを振るチゴガニ
写真下:チゴガニの「ウェイビング」
〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕
(2014年06月13日)