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美味しい深海──ヒウチダイvsハシキンメ
 └─葛西  2014/05/23

 2014年5月(この原稿を書いている時点で、まだ一昨日の話ですが)、私を含む葛西臨海水族園のスタッフ3名で、静岡県沼津市戸田(へだ)に深海生物の採集に行ってきました。戸田港では深海底曳き網漁でタカアシガニやアカザエビ、アカムツなど食用となる深海生物を獲っています。この漁船にスタッフも同乗させてもらい、網にかかってくる水族園での展示向きの生物を一緒に採集しています。

 戸田での採集のようすはこちらの記事もごらんください。
「深海生物採集の本格シーズン到来」(2011年12月02日)

 深海から引き上げられたさまざまな生物の中から、手早く目的の生物を取り分けていた私の目に、全長15センチほどの赤い魚がとまりました。それは、現地で「あぶらごそ」と呼ばれているヒウチダイです。残念ながらすでに死んでおり、展示用に持ち帰ることはできませんでした。同じ網には水族園で以前展示していたハシキンメ(現地名は「ごそ」)も入っています。この2種類はよく似ていて、注意していないと見間違えてしまうこともあります。

 ヒウチダイに注目したのは、この魚がとても美味しいという話を聞いていたからです。以前食べたことのあるハシキンメはとても美味しかったのですが、ヒウチダイはそれ以上だという情報でした。「食べてみたいな〜」と思いつつ、船上で比較のための写真を撮りました。

 翌日も早朝から漁船に乗せてもらう予定だったので、その晩はお世話になった船長が営んでいる民宿に泊まりました。その夕食に……出てきました!ヒウチダイとハシキンメ。一緒に獲れたユメカサゴ、チゴダラとともに煮付けになって。スタッフ3人で食べてみた感想は、「わずかな差でハシキンメの方が美味しい」でした。今回のヒウチダイは少し小さかったからか、身が軟らかすぎな感じがしました。しかし、どの魚も美味しく、個人の好みの差と言ってもいいかもしれません。

 戸田や沼津の周辺には、深海生物を食べさせてくれる飲食店や民宿などがありますので、ご興味をもたれた方は実際に行ってみることをお勧めします。その前後にはぜひ、深海生物の生きた姿を見るために水族園に足をお運びください。今回採集された生物は、裏の水槽で体力回復や餌づけなどをすませた後、世界の海エリアの「深海の生物」コーナーにお目見えする予定です。

写真上:深海から引き上げられた生物
写真中:ハシキンメ(上)とヒウチダイ
写真下:夕食に出された深海魚(上から)ハシキンメ、ヒウチダイ、ユメカサゴ、チゴダラ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2014年05月23日)



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