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群れ入り研修中のモモイロペリカン
 └─多摩  2014/03/28

 2013年多摩動物公園サバンナエリアではキリン、グレビーシマウマ、シロオリックスの出産があり賑やかな年となりました。しかしじつは、モモイロペリカンもひっそりと誕生していました。今回はあまり注目を浴びなかった、モモイロペリカンのひなの成長をご紹介します。

 多摩動物公園でのモモイロペリカンの誕生は、2007年以来6年ぶりのことです。2013年3月末より産卵が始まり、カラス等による卵の食害を防ぐために大事をとって採卵し、擬卵を抱かせることにしました。

 採卵した卵は育雛舎に預け、約1か月後の2013年5月2日に1卵が孵化しました。

 孵化直後にひなと擬卵を交換し本来の親に育ててもらう予定でしたが、卵が孵化したころには、親は擬卵を抱くのを止めてしまったので、そのまま人工育雛になりました。

 1か月ほどの人工育雛ののち、怪我のため数か月の入院が必要になり、サバンナエリアに里帰りしたのは、すっかり大きくなり白い羽も生えてきた11月6日のことでした。これまで人工育雛で育ったペリカンは、育雛期間が短かったことや2羽同時だったこともあり、比較的ペリカンとしての自覚がある個体が育ちました。

 しかし、今回のひなは人に対する執着が強く、環境に馴染むためには自身で乗り越えなければならない課題がたくさんありました。

 キリン舎の一室で飼育をはじめてから小放飼場に出るまで3日間、そこから大放飼場に隣接する囲いまで出るのに12日間かかりました。さらにほかのペリカンや動物がいる大放飼場に出たときには新たな課題が浮上しました。 

 私たちはほかの動物との接触事故を最も気にしていましたが、じつはこのペリカンは、小さなプールで水に触れたことはあるものの、足のつかないペリカン池は未知の世界だったのです。水鳥なのに水が怖くて池に入るのを嫌がります。誘導してやっと入り泳げたものの、ショックが大きかったのかそれから約1か月は部屋を出ることも拒むようになりました。それでも、一進一退を繰り返しながら徐々に水にも慣れ、今では群れに混ざって泳ぐ姿が時々みられるようになりました。

 岩を登っても降りられなかったり、ほかのペリカンにちょっかいを出したり、アオサギを追い払うのに夢中でアジを食べ損なったりとまだまだ課題はいろいろありますが、多摩動物公園のペリカンの一員としてゆっくり成長してきています。

 灰色で小柄なペリカンはモモイロペリカンのひなではなく、コシベニペリカンという別種です。今回ご紹介したペリカンは、すでにほとんどの羽が白色で体も大人サイズで大きく、左足に白い足環が目印です。外に出していないこともありますので、ご了承ください。

写真上:孵化44日目のひな、まだ育雛舎にいたころ
写真中:ベルの音を覚えさせ運動場への出入りをスムーズにした
写真下:群れとはまだ少し距離がある「左白」ペリカン

〔多摩動物公園北園飼育展示係 友岡梨恵〕

(2014年03月28日)



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