葛西臨海水族園世界の海エリアの「モーリシャス」水槽にトラウツボを展示しました。トラウツボは沿岸の岩礁帯に棲んでおり、伊豆周辺の海でも見ることができるウツボのなかまです。顎が湾曲しているので口を閉じることができず、長い筒状をした鼻の穴が角のようにも見えるのが特徴です。
じつは今回オニダルマオコゼとの同居展示に至るまでには、何回もの挫折がありました。
オニダルマオコゼは、ほとんど動かない魚なので、水槽内が少し寂しい感じがしていて、ほかの生き物を同居させようといろいろ試してきました。これまでにニザダイ、チョウチョウウオ、テンジクダイ、シャコなどのそれぞれのなかまを入れたのですが、オニダルマオコゼにことごとく食べられてしまいました。もちろんそれらの生き物は、食べられないであろうと思われる全長約15センチの大きさのものを選びましたが、オニダルマオコゼは思った以上の捕食能力をもっていました。
目の前を通る魚は何でも食べてしまう、悪食なオニダルマオコゼとの同居展示は、無理なのではないかと諦めかけていました。
そんなある日、裏の水槽にいるトラウツボと目が合いました。「もしかしたいけるかもしれない!」と直感しました。
そこで全長約80センチのトラウツボを2尾入れることにして、まずは1尾目をオコゼから離れたところにそっと入れてみると無事でした。しばらく観察しましたが、オコゼは一向にトラウツボに興味を示しません。そこで、2尾目は思い切って、目の前に入れてみました。すると何と!トラウツボがオコゼの口のすぐ上を通っても噛みつかず、それどころか、オニダルマオコゼがまるで岩であるかのようにグルグルと巻きつくように周りを泳いでいるのが見られます。
何はともあれ、このトラウツボとオニダルマオコゼの同居展示がうまくいってほっと一安心です。
写真:トラウツボとオニダルマオコゼの同居展示
〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕
(2014年03月28日)
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