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追悼、マナヅルと白いカラス
 └─上野  2014/02/14

 2014年1月、上野動物園東園のツル舎で隠れた人気者2羽が死亡しました。白いカラスとマナヅルです。

 白いカラスは、ハシボソガラスの白色個体(アルビノ)で、2003年の来園時からツル舎で飼育展示し、2014年1月2日に死亡しました。2002年5月16日に新潟県で4羽の白いひなが保護され、その内の2羽が当園へやってきました。

 みなさんがカラスと聞いて思い浮かべるのは、都市を中心に生活するハシブトガラスだと思いますが、少し小ぶりで開けた草原や農耕地などを中心に生活するハシボソガラスは知名度が低く、この白い個体をきっかけに来園者に知っていただきたいと、歴代の飼育担当者が展示にくふうをしてきました。2009年1月17日に1羽が死亡し、それ以降は今回死亡した個体1羽を飼育してきました。

 私は、2013年4月に初めて飼育を担当するまでハシボソガラスにはなじみがなかったので、人の手で育てられた個体にもかかわらず、人への警戒心が強いのには驚きました。いつも神経質そうにしていたのですが、盛夏の朝方、見晴らしの良い止まり木で、ハシボソガラスの特徴である濁った声で「ガー、ガー」と元気いっぱいに鳴いていた姿は、非常に印象的でした。

 マナヅルは、「ヅル」という愛称で来園者に親しまれたオスの個体です。

 1965年6月16日当園生まれで、2014年1月9日に死亡しました。48歳6か月という国内最高齢を記録し、また当園で飼育するすべての鳥類の中で最長飼育期間の記録をもち、長寿・長年飼育動物として毎年表彰をされていました。

 ここ数年は足取りがおぼつかなくなってきましたが、毎日の給餌を扉の前で心待ちにしていて、目の前に皿が置かれるとすぐさまくちばしの感覚でワカサギを探し出して食べるようすにいつも感心していました。関節が強張り、立ちあがれなくなることも何度かありましたが、駆け付けると何食わぬ顔で歩いていることがほとんどでした。

 ヅルが死亡した日、いつもどおりに扉の前で待ち構えたヅルに、いつもどおりに給餌し、ヅルもいつもどおりにワカサギを選り分けて食べていたのですが、その1時間後に倒れてしまいました。いつもの強張りかなと思いながら展示場に向かったのですが、ヅルは立ちあがろうとしてそのまま息絶えていました。

 翌日、1984年から連れ添ったつがいのメスが、ヅルを探すように低い声で鳴き続けていました。常連のお客さんもすぐにヅルの不在に気づき、死亡した旨をお伝えすると、しばし声を失う方もいらっしゃったほどで、みなさんに愛された存在であったことをしみじみと感じさせられました。

 ヅルは長生きしただけでなく、マナヅルの繁殖にも大いに貢献し、その子どもたちは国内各地で活躍しています。その子育て能力の高さを見込まれ、他種のツルの卵を託されて、仮親として育て上げたことも何度もありました。

 ありがとう、ヅル。やすらかに。

写真上:止まり木で鳴く白いカラス
写真下:マナヅルの「ヅル」

〔上野動物園東園飼育展示係 佐藤恵〕

(2014年02月14日)



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