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アマモ場における幼魚の生活
 └─葛西  2013/08/09

 みなさんは海の中にある「アマモ場」をご存じですか? アマモ場とはアマモという1メートルほどの細長いイネのような葉をもつ植物が群生するところです。沿岸の浅い海に広がっていて、東京湾内でも数か所で見ることができます。

 アマモ場には大きな捕食者が入ってこられないことから、さまざまな小型の生き物が数多く生息し、稚魚の時期をアマモ場で過ごす魚も多く見られます。

 葛西臨海水族園「東京の海」エリアには、このアマモ場を再現した水槽があります。最近、ボラとチャガラの幼魚が仲間入りしました。

 展示しているボラの幼魚は、全長2センチほどで丸みを帯びた銀色の体、チャガラの幼魚は全長3センチほどで薄いオレンジ色の体に黄褐色のシマ模様が特徴的です。

 両者を観察すると、それぞれの生活スタイルがずいぶん違うことが分かります。

 ボラは水槽の水面付近にいることが多く、30尾ほどの密集した群れでアマモの間をせわしなく移動します。移動の途中で、アマモの表面に口を押しつけて左右にぷるぷると振っているのが観察できますが、これはアマモについた餌を食べているのです。しかし、食べている間に群れに置いていかれそうになると、食べるのをやめて急いで群れを追いかけます。

 一方のチャガラは、水槽の中層で散らばっていることが多く、あまり泳ぎ回らずにほぼ同じ場所で浮いています。そして、ときどき水流にのって流れてくる小さな餌を、ほんの少し動いて口に入れています。積極的に餌を探し回る姿を見ることはあまりありません。

 このように、同じ環境の中でくらしていても、魚の種類によって各々の生き方に特徴があるようです。2種の幼魚の行動の違いに注目しながら、「アマモ場」の水槽をのぞいてみてください。

写真上:水槽に茂るアマモ
写真中:ボラの幼魚の群れ
写真下:チャガラの幼魚

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三浦絵美〕

(2013年08月09日)



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