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岩の下でイワシャコが孵化!
 └─多摩  2013/07/05

 多摩動物公園サル山の近くにあるヤケイ舎の一番端のケージ、このちょっと目立たない場所で、2013年6月29日にイワシャコのひなが8羽孵化しました。
 孵化当日は母親の腹の下にいましたが、翌日にはケージ内を母親について歩きまわるようになりました。

 イワシャコが自然抱卵で孵化したのは、多摩動物公園では初めてのことです。今回はいろいろな偶然が重なって自然繁殖に成功しました。 

 まずペアの形成です。元々はオス1羽とメス3羽で同居していましたが、2月ころから個体間の争いが激しくなったため、いじめられていた個体を別のケージに移す作業を繰り返し、現在のペアの2羽が残りました。野生でイワシャコは通常数十羽の群れを作ってくらしていますが、繁殖期にはつがいを形成し攻撃的になります。今思えば、仲良くくらしていたイワシャコがケンカをするようになったのは本来の習性だったようです。

 次に巣の場所です。ケージには巣箱を設置していませんでしたが、元々あった岩の下の隙間がちょうどよい場所だったようです。親鳥は岩の下に落ち葉などを集めて巣を作り、5月14日から産卵を始めました。14卵を産み終えたあと、6月4日からメスが抱卵を始めました。抱卵を始めてくれるよう、産卵が始まってからはなるべく親鳥の邪魔をしないように飼育することを心がけていましたので、抱卵を開始したときはほっとしました。
 いつもは砂浴びをしたり、かなりリラックスした姿で昼寝をしたりとマイペースなイワシャコですが、抱卵が始まってからはようすが一変し、メスはぴったりと身を伏せてじっとしていました。オスは、隣のケージとの境を鳴きながら行ったり来たりして、見張りをしていました。ただ、メスが巣を離れて餌を食べに行くときはいつも通りのマイペースな雰囲気で、水浴びや散歩をしてから巣に戻っていました。

 孵化した直後もオスは見張りを続けていましたが、最近はだいぶ元のリラックスした姿に戻りつつあります。ケージの中は8羽のひなと親鳥でにぎやかになりました。ひなが見あたらないときは、母親のお腹に注目してください。腹の下で休んでいるひなたちの足が見えるかもしれません。

写真上:母親と一緒に餌をついばむひなたち
写真中:母親の下に潜り込むひなたち
写真下:放卵中の母親

〔多摩動物公園南園飼育展示係 中島亜美〕

(2013年07月05日)



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