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天狗の仲間に鬼を追加、オニテングハギの展示
 └─葛西  2013/07/05

 2013年5月下旬、葛西臨海水族園世界の海エリア「南シナ海」水槽にオニテングハギが加わりました。オニテングハギは、インド洋から西部太平洋の暖かい海に分布するテングハギのなかまです。テングハギのなかまの特徴は、なんといっても天狗の鼻のように伸びた頭の突起で、英語ではユニコーンフィッシュと呼びます。ユニコーンと天狗ではだいぶ印象が違いますが、どちらも特徴をよく表しています。

 この突起は子どものうちはなく、成長とともに伸びてきます。また、近縁種のテングハギはオスメスともに突起が伸びますが、オニテングハギはオスだけに見られます。テングハギのオスの突起はメスへの求愛に役立つことがわかっているので、オニテングハギの突起も同じような役割をするのかも知れません。

 今回展示したオニテングハギは、体長50センチ以上の立派なオスの成魚です。しかし周りには、タマカイやドクウツボといった2メートル近い魚のほか、大型のテングハギもいるので、うまくやっていけるか心配でした。悪い予感は的中し、水槽に入れた途端、オニテングハギは元からいるテングハギに追いかけられ、そのときにつけられたと思われる、スパッと切られた傷跡が痛々しく残ってしまいました。テングハギの武器は、尾の付け根にある2本の大きなトゲで、とても硬くまるで鋭利な刃物のようです。

 デビューから1か月がたち、オニテングハギの傷はすっかり癒えました。けんかもひと段落し、ほかの個体との関係も良好です。オニテングハギは1尾しかいませんが、隠れることもなく堂々と泳いでいます。この分なら、水槽の顔としてやっていけそうです。

 なお、水槽にはテングハギのほかにも似た種類として、ヒメテングハギも展示していますが、オニテングハギは、頭の後ろあたりから背中が盛り上がっているので他種と容易に区別がつきます。

写真上:テングハギに切られた傷が痛々しいオニテングハギ
写真中:テングハギの尾の付け根にある2本のトゲ(左尾柄部標本)
写真下:すっかりほかの魚と馴染んだ現在のオニテングハギ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕

(2013年07月05日)



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