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アユのなわばり行動が見られます
 └─井の頭 2013/06/21

 井の頭自然文化園水生物館では、2013年4月30日から「中流(瀬)」の水槽でアユの展示を始めました。

 アユは日本では北海道の西側から九州にかけて各地に分布しています。古くから食用として、また釣り魚として親しまれており、一般的に川と海を行き来する魚としても知られています。秋に川で産卵し、大きさ5ミリ程度で生まれた子どもは海に下っていきます。子どもは冬から春にかけて海で過ごし、5〜8センチに成長して、初夏に川に戻ってきます。その年の秋に卵を産むまでの間、餌の藻類が豊富な川の中流域で過ごすのです。

 展示を開始した時の大きさは10センチくらいで、水槽には一度に約30尾入れました。初めは水槽の底近くを群れて泳いでいましたが、最近になってなわばりを主張するものが出てきました。

 自然のアユも川を上っていくときは群れていますが、中流域までくるとその行動に変化が現れます。そのまま整然とした群れでいるもののほかに、なんとなく集まって群がっているものや、単独で移動するものなどが出てきます。さらにそれらの中から単独で定住を始め、石の表面に生えた藻類を食べるものが現れます。その定住が1か所で続くことにより、なわばりが生じるのです。このように、なわばりは藻類が良く育つ大きな石を中心に作られます。

 水槽では、大きめの1尾が広いなわばりを持ち始めました。ほかのアユより成長が早く体型がしっかりしています。胸びれのつけ根には、だ円形の黄色い模様が目立っています。石に勢いよく口をこすりつけ、表面の藻類をはぎ取って食べています。その場所にほかのアユが近づいてくると激しく追い払います。オイカワやボウズハゼも同じく藻類を餌とするため、追い払われる目に合います。

【アユのなわばり行動の動画】
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 自然の川では、アユの密度がある一定以上になると、侵入者を追い払うための労力が大きくなってなわばりを維持するメリットがなくなり、なわばりをもたずに、群れでくらすようになるようです。その密度は1平方メートル当たり3尾とも8尾ともいわれていますが、餌となる藻類がどれくらい豊富にあるかなどにも影響されるようです。

 展示水槽は1.3平方メートルくらいに30尾ほどいますので、その中でなわばりをもつものが出てきたことは興味深いことです。

 アユは一般的に「清流にすむ魚」というイメージがありますが、日本の川でごくふつうに見られる魚の1つです。多摩川や荒川、江戸川などにも毎年東京湾から多くのアユが上がってきています。私たちにとても身近な魚、アユのくらしぶりを、ぜひ見に来てください。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 金原功〕

(2013年06月21日)



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