葛西臨海水族園では2013年5月30日から、世界の海エリア・深海コーナーの「深海I」水槽で、ゴマフウリュウウオの展示を始めました。
ゴマフウリュウウオは、スリッパのような平たい体と三角形の頭が特徴的で、ちょっと見ただけではとても魚には見えないユニークな姿をしています。日本近海にいるフウリュウウオのなかまは5種で、すべて深海に生息し、大きさは10センチ前後とあまり大きくはありません。
フウリュウウオは漢字で「風流魚」と書きますが、このユニークな魚のどこが風流なのでしょうか? 風流の意味を辞書で調べてみると「落ち着いた優雅な趣のあること」とあります。展示水槽のゴマフウリュウウオをじっくり観察してみると……ほとんど動かず、確かに落ち着いています。
発達した胸びれと腹びれを使って、ときどきペタペタと歩くように移動することがありますが、その姿は可愛いらしさ満点です。ほとんど動かないように見えますが、いつの間にかアクリルガラスの前から水槽奥に移動しているので、気がつかないうちに意外に動き回っているようです。
ごくまれに三角形の頭を横に広げていることがありますが、これが威嚇なのかリラックスしているのかは分かりません。
泥の中に顔を突っ込んで餌を探す行動をとるそうですが、これはまだ水槽内で確認できていません。
いろいろ観察してみても、残念ながら水槽内のゴマフウリュウウオから優雅で趣のあるようすは感じられなかったので、改めて風流の意味を調べたところ、ほかに「先人が残した美風・なごり」と出てきました。
じつはこのゴマフウリュウウオは、アンコウのなかまで、アンコウといえば「エスカ」と呼ばれる疑似餌をもつことで有名です。フウリュウウオのなかまのエスカは尖った鼻の下の窪みにありますが、退化していて、動かすことはできますが実用性はほとんどありません。これがまさにアンコウのなごりであり、風流の意味するところなのでしょうか。今日も相変わらず動かないゴマフウリュウウオを眺めながら、そんなことを考えてしまいました。
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「スローモーションで見るアンコウの摂餌」(2007年07月27日)
同じ水槽で展示しているミドリフサアンコウにもエスカがあります。
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「本当に生きているの? 動かないミドリフサアンコウ」(2011年05月13日)
写真上:海底に立つゴマフウリュウウオ
写真下:吻端のくぼみに収まっているエスカ
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕
(2013年06月07日)