ニュース
チンパンジー「ミル」初めての出産
 └─多摩  2013/05/24

 2013年4月13日、多摩動物公園のチンパンジー「ミル」(10歳)がオスの子を出産しました。父親はアラシです。破水を確認してから約1時間の安産で、出産後すぐにミルは赤ん坊を胸に抱きました。

 しかし、4月15日に子の死亡を確認し悲しい結果となりました。その経過をお伝えします。

 ミルは、群れの中で育ち、以前からほかの個体の子どもたちを子守りする行動が見られていました。しかし、同年代の個体と比べると、精神面での幼さが目立ち、出産前には飼育係一同、ミルが子育てできるのか大変心配しました。そして万が一、子を放棄してしまった際の対応策を話し合っていました。

 ところがミルは、係員の心配を見事に裏切り、14時15分の出産後、その日の夕方には子がミルの乳首をくわえている姿が確認でき、ミルは子を愛おしそうに毛づくろいしたり、子が泣くと落ち着かせるように抱き直したりして、しっかりと世話をする姿を私たちに見せてくれました。

 しかし係員が安心したのも束の間、4月15日10時15分に赤ん坊の死亡が確認されました。生後35時間の短い命でした。ミルは死んだ子を抱き続け、一生懸命に世話をしようとしていました。それがとても痛々しく、見ているのが辛い光景でした。ようやく諦めがついて子を離したのは16時でした。

 動物園では、死んだ動物は獣医師が解剖し死因を究明します。赤ん坊の死因は、解剖の結果頭部挫傷と判明しました。飼育係が見ていない時間に頭部を打ち付ける事故があったと推測しています。

 ミルの初めての出産は悲しい結果となりましたが、ミルは係員の心配を裏切って甲斐甲斐しく子の世話をし、哺乳もできることがわかりました。短い命だった赤ん坊は、母親のミルと飼育担当者に貴重で尊い経験を残してくれたので、次回の妊娠・出産にこの経験を活かしていかなければと思っています。

写真:生後15時間のころ

〔多摩動物公園北園飼育展示係 牧村さよ子〕

(2013年05月24日)



ページトップへ